望んでいるのは、たった一言。

迷っているのは、たった一言。




























共に迷い。




























迷わなかった事などない。

実際、今だって迷っているんだ。


「嘘吐きだね、手塚。」


手塚の言った言葉に、俺は笑顔でそう返す。

迷ったって、出す結論はいつでも一緒なのに。


「迷ってるなんて、嘘だよ、手塚。」


そう、嘘なんだ。

手塚は決して、迷ってなんかない。

きっと、待ってる。

『行ってらっしゃい。』 その、一言を。


「俺ね、それくらいわかるよ?」


いつだって迷っているのは、俺の方。

『行ってらっしゃい。』

言ってあげなきゃいけない言葉。

言うことを、ずっと迷っている言葉。

帰ってこない方が良いことくらい、俺だって知ってる。

でも…

その、繰り返し。


「英二。」


手塚はきっと、言って欲しいと言うことで俺を縛ることを恐れてる。

こんな時、手塚に自信って言葉は微塵もない。

俺が多分一生、これ以上の感情を持つことがないって事を、認めてくれない。

迷ってるとしたら、きっとその事。


「良かったね。」


ギリギリの、境界線。


「行ってきなよ。」


口にするのは、促す言葉だけ。

手塚は驚いたみたいに目を見開いてる。

これ以上は、言ってあげない。

手塚が迷いを断ち切るまで。

俺の迷いを、断ち切るまで。

そしたら、


「ずっと待ってる。行ってらっしゃい、手塚。」


そう言ってあげるよ。










了。




一緒に迷うって、難しい…。
暗くてすみません。(汗)