秘めたるは、焔。




























共に抱き。




























「ちっくしょぉぉーーーーー!!!!」


前方から聞こえた声に、泣いていないことを悟る。

目指す先は、夕日に照らされた金属の塊。


「次は絶対絶対、負けないかんな!!!」


金属の塊と同じく夕日に照らされて上手く見えない影が両手を掲げて叫んでいる。

その言葉に、笑みが漏れた。


「だから、一緒に全国制覇しような!手塚!!!」


突然振り向かれて驚く。

表情はよく見えないが、おそらく笑っているのだろう。


「気付いていたのか。」

「トーゼン!俺を誰だと思ってんの?」

「菊丸英二だ。」

「んでもってお前のスウィートハートでしょ!」

「ス…。」


菊丸らしいと言えばらしいが、あまりの単語に言葉を詰まらせた。

固まった俺を見ながら菊丸は声を上げて笑う。

英語の先生が向こうではそう言ったりするって言ってたよ。

そう言って菊丸はぴょん、と立っていた場所から飛び降りた。


「心配してくれたの?」

「お前は俺の…それ、らしいからな。」


さすがにスウィートハートなどと言うのは気が引けて言葉を濁しながら言うと、菊丸はそれでも満足そうに頷く。

背の高い金属のお陰で今度はきちんと表情が確認出来た。


「俺のこと大好きだね、手塚。」

「…今更だ。」


テニスバッグを掴んで駆け寄ってきた菊丸と肩を並べ、来た道を戻る。

数歩俺より前に進んで、菊丸は俺を振り返った。

目の前に突き出された、拳。


「そういや、返事聞いてない。

 一緒に全国制覇。な!」

「…当然。」


俺も拳を突き出してゴツ、と合わせると、菊丸はニッと笑った。


振り返った菊丸の瞳の中、夕日の所為ではない、揺るぎない焔。










了。




抱くは、『だく』ではなく、『いだく』ですよ。
時間としてはいつでもいい感じで。1年かも、2年かも、3年かもしれない。
抱くのはこれしかないでしょ、というベタなネタ。