目を閉じて、口付けを。

誰よりも大切な人に。




























共に誓い。




























白いヴェールから覗く顔は、見慣れたものだけれど。

どうして、白いヴェールからその顔が覗くのだろうか。


「あれ、ビックリしすぎで硬直してる?」


楽しそうに笑ったのは誰よりも大切な恋人。


「…何を、している。」

「な、俺美人?」


いつもより低めに声を出して尋ねれば、嬉しそうに笑って質問を返された。

ため息をひとつ。


「手塚ってば何でそこでため息つくわけ?

 美人に決まってるじゃない。ボクと姉さんがやってあげたんだから。」


そう言って笑っているのは不二。

その隣でこのやり取りに苦笑しているのは大石。

ファンタを片手に興味なさそうにしているのが越前で、

美人ッスよ!と興奮気味にはしゃいでいるのが桃城。

乾は何のかはわからないデータをノートに書き込んでいて、

海堂は相変わらず俯き加減で我関せずを決め込んでいる。

河村はそれをにこやかに見守っていた。

なぜ、皆正装をしているのだろうか。

そう思って自分を見ると、見事に正装。それも、真っ白なスーツ。


「なぁ。俺、ちゃんとお前の花嫁さんに見える?」


少し照れたように俺を見上げ、微笑んだのが菊丸英二。

誰よりも大切な人。

俺と同じ色のドレスに身を包んだ恋人は、確か、俺と同性だったはず。

それに、発言にも随分問題があるように感じられた。

俺の、花嫁…?


「菊丸…?」


俺が名を呼ぶと菊丸は少しむっとしたように顔をゆがめる。


「俺はもう菊丸じゃないの。ちゃんと呼べよな…国光。」


そう言うと、恥ずかしそうに顔を赤らめた。














コツ














瞬間、額に何かがあたって俺は目を覚ました。

ゆっくりと目を開けると、隣で寝ていた菊丸の腕だということに気付く。


「夢…。」


随分とおかしな夢を見たものだと少し不思議な気分になった。

起こさないように気を使いながら菊丸の腕を毛布の中に戻す。

すやすやと安らかに眠っている菊丸は、少し寒かったのか毛布にくるまって顔だけ出していた。

それは、恰好だけ見ればまるで夢の中のよう。

しかしヴェールやドレスではなく、毛布という辺りが今の俺達らしくて小さく笑う。


「ん…?」


少し身じろいだ菊丸は眠たそうに目を擦りながら、ぼんやりと目を開けた。

暫く焦点の上手く合わない瞳のまま俺を見つめ、ふわりと微笑む。


「おはよー。」

「…あぁ。」


ゆっくりと毛布の上から撫でてやれば、菊丸は嬉しそうに目を閉じた。

じんわりと身体の奥に染み渡るような感情は、愛しさ。


永遠の誓いなんて、まだまだ幼い俺達には出来はしないけれど、


「英二…。」


俺が名を呼べば、菊丸は驚いたように目を開ける。

顔を真っ赤にして俺をじっと見つめた。


今この瞬間に感じていることは本当だから。


「…国、光?」


嬉しそうに、愛しそうに、恥ずかしそうに菊丸は俺の名前を紡ぐ。

きちんと通じてる想い。

頬を撫でれば菊丸はゆっくりと微笑んだ。

どちらともなく近づいて、目を閉じて、

誰よりも大切な人に、誓いの口付けを。





今愛していると、あなたに誓います。










終。






誓いは一緒にするものだから、待つんじゃなくて、一緒に。
この話にデジャブを感じたあなた!大正解です。