天気雨。




























「うわわ!降ってきた〜!!!」


サーーーーと、音があるのかないのか、それくらいに微妙な音を立てて

晴れ渡っている空から、冷たいしずくが落ちてくる。

突然の天気雨に、部活中だった部員の面々は慌ててコートを片付けて部室に避難した。

部員達が全員部室に入ったのを確認して、自分も入ろうと戸に手をかけて、

違和感に思わず振り返る。

ネットもボールも片付いたテニスコートの中心に、

最初に降ってきた!と声を挙げた菊丸が楽しそうに空を見上げていた。


「何をしている!!早く部室に戻れ!!!」


声を張って呼びかけるが、菊丸に戻る様子はない。


「菊丸っ!!!!」

「んー?手塚も一緒にどう?気持ちいーよ!!」


晴れた空の下、きらきらと輝く雨に打たれながら、

楽しそうにくるくると回って笑っている。

部室の屋根の下から出て、菊丸の元へと足を向けた。


「菊丸。」

「いつもみたいに冷たくねーの。それに、多分通り雨だからすぐやむんじゃないの?」

「そういう問題じゃない。風邪を引くだろう。」


楽しそうにくるくると回っていたのと急に止めて、菊丸はじっと俺を見る。

急に止まったことに驚いて俺が思わず一歩後ずされば、

じっと俺を見ていた菊丸はにかっと笑った。


「心配アリガト!でも大丈夫だよん!!」

「そんな根拠などどこにもないだろう。

 こんな大事な時期に、お前に風邪を引かすわけにはいかない。」


にかっと笑っていた菊丸は、俺の言葉を聞いた瞬間むっとした表情に変わる。


「レギュラーの俺が、大事だモンね。部長の手塚くんは。」

「レギュラーのお前が大事なら、俺はわざわざ屋根から出てきたりしない。」


むっとしている菊丸に言い返すと、途端に菊丸は意地悪げな笑みに変わった。


「大事な大事なレギュラーなのに、意外と冷たいねぇ。部長。」

「減らず口をたたくな。戻るぞ。」

「ラジャ!部長!!」


最後は、満面の笑み。

俺と菊丸が部室まで戻った途端に、雨はやんだ。


「ありゃ、やんじゃった。」


残念そうに空を見上げる菊丸を、部室に入るよう促す。


「英二?わ、凄く濡れてるじゃない!!」

「え、あーホントだー。」


あはは、と楽しそうに笑いながらテニスバッグからタオルを出す菊丸を横目に、

大石に目を向けた。


「これじゃ、今日の練習は終わりだな。」

「あぁ。西の空が暗いから、もう一雨くるだろう。」

「そうか。

 みんな、もう着替えて良いぞ。今日の部活は中止だ。」


大石の声に、ハイ、と返事が返ってきて、部室内にいた者が着替え始める。

全員が同じ時間に着替えるため、ロッカーは必然的に混雑する。

特に急いでいない俺は、先に部誌を書くことにして筆記用具をバッグから取り出しベンチに座った。

黙々と部誌を書いていると、ふと紙面が暗くなる。

顔を上げると、髪を拭き終わったらしくタオルを首にかけて部誌を覗き込んでいる菊丸と目が合った。


「早く着替えろ。」


目を見たままそう告げると、唇をとがらせて俺の横に座る。


「だぁって、すいた後で着替えた方が楽じゃん。」

「お前が一番濡れているだろう。脱ぐだけでも脱げ。」

「うわー!部長がセクハラー!!」


菊丸がそう言った直後、部室の至る所から吹き出す音が聞こえた。

くだらないことを言うな、という意味を込めて菊丸を睨むと、

にまーっと笑ってほいほーい。と両手を挙げる。


「あれ、部長のセクハラに従うんだ?」

「そーそー。俺って一平部員だから、逆らえないのー。」


にこやかな笑みを浮かべた不二がそう言えば、

菊丸も悪乗りしてそう言いながらバサリ、とレギュラージャージを脱いだ。

ついでに中に着ていたポロシャツも脱いで、

上半身裸のまままだ乾いてはいない髪をタオルでゴシゴシと拭く。

その様子にひとつため息を吐いて、

自分の着ていたレギュラージャージを菊丸に投げつけた。


「ぶわっ!!」

「余計風邪を引くだろう。着ておけ。」

「んーさんきゅー。」


受け取ったのを確認して、部誌の続きを書いていると、

「うげ、デカっ!!むかつくーーー!!」という菊丸の声が聞こえてくる。

袖が少々余るらしく、余った部分をブラブラとさせて、それを桃城にぶつけて遊んでいた。


「何するんスか、エージ先輩!!」

「手塚がムカツクから八つ当たり!」

「ひでーッスよー!!」


ぎゃいぎゃいと騒いでいる内に部員は一人一人と帰っていき、

そこそこロッカーもすいた為、菊丸は俺のレギュラージャージを脱いだ。


「あんがとな、ぬくかった。」

「あぁ。早く着替えろ。」

「はいはい。」


やっと着替えだした菊丸にまたため息を吐いて、残り少ない部誌の欄を埋めていく。

全て埋め終わり、部誌を閉じる頃には、部室に残っているのは俺と菊丸を抜かし、3人になっていた。

その3人ももう帰る、と挨拶をして部室を出ていった。

いつの間にか着替え終わっていた菊丸は俺を振り返って、少し嬉しそうに笑う。


「一緒に帰ろ。んで、寄り道して良い?」

「あぁ。」


頷いてふと窓の外を見ると、また雨が降り出していた。

俺がずっと見ていた所為か、菊丸も窓に視線を向ける。


「あ、また降ってきた。」


喜ぶかと思ったが、予想外に菊丸は不機嫌そうにそう言った。


「嬉しくないのか?」

「えーだって、濡れるし、帰るのに面倒だし。」


さっきまでは濡れて気持ち良いなどと言っていたにも関わらず、菊丸は不満そうだ。

相変わらず気分屋だと思いながら立ち上がって、着替えるためにロッカーへと向かう。


「ねー手塚ー。」

「何だ。」

「好きだよー。」


突然の言葉に面食らって思わず振り返ると、菊丸は穏やかな笑みを浮かべてこちらを見ていた。

突然なんだ、という言葉を飲み込んで菊丸の髪を軽く撫でると、菊丸は満足そうに笑う。

ついさっきまで不満そうだったというのに、本当に読めない。

そう思いながら早く帰りたいらしい菊丸のために、さっさと着替えをすませた。


「終わった?帰る?」

「あぁ。」


互いにバッグを担ぎ、部室のドアを開ける。

そこには、さっきまでの雨が嘘のようにまた晴れ渡った青空。

西の空も明るく、もう雨は降らないだろう。


「うわ!あがってるよ、手塚!!ラッキー!!」


嬉しそうに満面の笑みを浮かべる菊丸越しに青空を見て、似てるな、と思った。


「手塚?」

「いや、何でもない。帰るか。」

「?うん。」


不思議そうに俺を見上げる菊丸の髪を、もう一度撫でた。





晴れて、曇って、雨が降って、またすぐ晴れて。

気分屋な雨と、君と。









end.




正直に言えば今日の天気です。お天気雨でした★
その時にこんな事を思った私はドリーマー!!(痛)
こっそりぶかジャだということに気付きました…!!
や、でもチラリズム&色気皆無だから違う筈…。