離れて最初の誕生日。

わたされたのは、大きな箱。




























お届け物はなんですか?




























ハードな練習を終え手塚が家に帰ると、そうそうに二度ほどドアベルが鳴った。

ドアを開けると爽やかな笑顔の青年がそれを手塚に渡す。

とても大きな箱。

宛名を見れば、『Eiji Kikumaru』とあり、『Raw』『生もの』と、

日本語と英語の両方で箱の全面にでかでかと、見慣れた少し崩れた字で書いてある。

ふとカレンダーで日付を確認して、今日が自分の誕生日であることに気付いた。


「生もの…?」


中身がおそらく自分の誕生日プレゼントであることは予想は出来たものの、

何が入っているのかは全くわからない。

生ものにも関わらず冷蔵指定がないことから、食べ物ではないことは確実だ。

食べ物ではない、生もの…?

手塚は少し首を捻りながら雁字搦めといっても良いほどに巻き付けられたテープにゆっくり手を伸ばした。


「これは…。」


ゆっりとガムテープをはがしていく内に、かぎ慣れた匂いが鼻につく。

ガムテープをはがす手を少し早めて、少し乱暴に箱を開けた。

ふんわりと香ってくる甘い懐かしい香り。

それは、大切な恋人の家に植えられていた花で、

秋になると窓が開け放たれた恋人の部屋にはいつも甘い香りが充満していた。

何重にもビニールに包まれたそれは、濃い緑の葉に、オレンジに近い黄色の小さな花。


「金木犀…。」


包みを破ると、少し強くなった香りが部屋に充満してゆく。

ゆっくりと金木犀の植木を箱から出して少し眺めた後、ベランダへ連れて行った。

金木犀の緑とオレンジが、色気のないベランダにとても良く映える。

ふと包みの底を見ると、見慣れた崩れた字の手紙を見つけた。

植木をさわって汚れた手を洗い、ソファに座って手紙を開く。

そこにはやはり見慣れた崩れた字が跳ねるように並んでいた。


『やっほい!!久しぶり、手塚!!元気にテニスしてる?

 俺もみんなも相変わらず!!引退してからもちょくちょく部に顔出して発散してるよ!!

 んで、本題だけど、誕生日オメデトー!!!

 やっと15だっけ?これから一ヶ月半はお前が兄ちゃんだかんな!!

 で、プレゼントだけど…どうよ?懐かしいっしょ!!

 俺ん家にあるヤツこっそり折って育ててたヤツをお前に譲ってやるよ!!

 今年やっと花が咲いたんだからな!!大事に育てろよー?

 来年花咲かなかったら俺泣くからな?俺だと思って大事にしなさい!!

 じゃ、身体に気を付けて元気にやれよ。

 はっぴーばーすでー!!

 頑張れ手塚っ!!!

 バーイ 英二。』


「文面でも元気なヤツだ…。」


そうは言っても、勿論寂しがっているのもわかっているけれど。

手塚は思わず緩んだ頬もそのままに、ゆっくりと受話器を取る。

幾度かの電子音の後に聞こえるはずの声を想像しながら、

一ヶ月半後にある恋人の誕生日の計画を練るのだった。





『誕生日オメデトっ!!!』

「あぁ、有り難う。」










了。






+言い訳+

ハッピーバースデー!手塚!!!
幾度目かの15歳おめでとう!!(笑)
つか、誕生日記念なのに一人でゴメンよ!!何とか電話でラブってくれ!!
あー…もっと甘いの書きたかったのに…。
金木犀の香りが好きだー!!って話です。
とにかく間に合って良かった…!!!
しょぼいし短いし寂しいかもしれないけど、ちゃんと祝いたいのよ?
えぇ、そりゃあもう!!
とにかく、おめでとうでした!!!
Have a nice birthday!!

2004-10-07 茶瓜。