5:僕は信じていた




























俺は信じていたわけじゃない。

だけどさ、出来るだけ多く願っておいた方が

叶う確率だって上がりそうじゃん。

そう思っただけだった。


「持ったか?」

「持ったよ。」

「行くか。」

「うん。」


靴をちゃんと履いて、おばさんにお邪魔しました、と告げる。


「でもさ、何で?」

「何がだ。」

「何でノッてくれたの?」


行き先は近くの小学校。

お兄さんもどうぞ、と七夕祭りと称したバザーで配ってた短冊を

冗談半分で手塚の家まで届けに行ったのが、きっかけ。

どうせなら下げに行こう、と提案した手塚と一緒に小学校に向かいながら、

俺は首を傾げた。


「持ってきておいて、何だ。」

「や、からかい半分、つーかなんつーか。」

「…お前な。」

「ま、イイや。で、何て書くの?」

「全国制覇。」

「テニス馬鹿ー!」


予想通りの答えを返す手塚に、俺は大笑いしながら歩を進める。

俺があまりにも笑っているので、手塚は少し眉間にしわを寄せながら、

「だったらお前はなんと書くつもりだ。」と聞いた。


「内緒ー。」

「…………。」


深くため息を吐く手塚を笑いながら、横を歩く。

本当の願い事はもう、小学校の笹の下で揺れてる。


その願いが叶うのはそれから10分後だなんて、知る由もなく。

信じていなかった筈のこのイベント、

感謝の気持ちから今晩柄にもなく空を見上げることになる。









終。