4:どうして




























どうしてこんな事になったんだっけ。

なんて思うのは、引き寄せられた腕の中。

少し強く抱きしめられたその腕の感触は、もう随分と慣れたもの。


「英二?」


人を下の名で呼ぶ事をあまり好まないコイツが、唯一呼ぶ俺の名前。

首を左右に振れば、少し不思議そうにしながらもそれ以上は何も聞かれなかった。

困惑を続ける頭を軽く振って、俺より少し高い位置にあるその肩に顎を乗せる。

どうしてこんな事になったんだっけ。


トントントン


軽く軽く背を撫でられて、何となく息を吐いた。


「なぁ。」


わからない事は、聞くに限る。

顔を上げてそいつを見上げながら、さっきからの疑問を投げかける。


「どうして、こんな事になったんだっけ?」

「こんな事、とは?」


少し困惑気味に聞き返された言葉に、


「こーゆー、事。」


ぎゅう、と抱き付く事で返した。

さらに困惑したように俺を見るそいつを少し笑って、頬に軽く触れる。

驚いたように、目を見開いた。


「やめると、言うわけではないのか?」

「へ、何で?」


嫌になったのかと思った、と小さく言ったそいつに、

まさか、と軽く笑って返す。


「純粋な疑問?そういえば、どうしてこうなったんだっけーって。」


告白されたわけじゃないし、

告白したわけじゃない。


「好きだなんて、言われた事ないじゃん。」

「…言って欲しいのか?」

「うんにゃ?わかってるから良いよ。」


誰よりも特別に好かれているのは、わかってるけど。

どうしてだっけ、と。


「忘れたのか。」


やっと少し笑って、そいつは俺の髪を撫でた。

およ、どうやらコイツは覚えているらしい。


「うーーーん…実は。」

「グラウンド50周ものだな。」

「げ、なんだよそれ!」


ぎょっとして思わず見上げれば、少しの笑みと共に柔らかいキスが降ってくる。


「大嫌いだと、お前が言ったんだ。」


一瞬の間の後ぶわっと顔を真っ赤に染めた俺を見ながら、手塚はくつくつと笑っていた。









終。