ネバーギブアップ!




























ずっとずっと、欲しい、と思ってた。

手に入れてみせるって、思ってた。


「先輩。」

「うん?どした?おチビ。」


練習も終わって、いつも通り菊丸先輩と桃先輩と一緒に寄ったファーストフード店。

奢ってくれなくていい。と告げると、菊丸先輩はちょっと目を見開いた後、

ニヤーっと笑って、俺の頭を抱え込んでぐりぐりといじくり回すように撫でた。

大笑いしてる桃先輩にジロリと恨めしい視線を向けるけど、

先輩は相変わらずっていうか、俺の視線もまったく気にすることなく笑い続けている。


「偉いぞおチビ!!なんって先輩想いの後輩なんだーー!

 ほら桃!お前も笑ってないでおチビちゃんを見習えよー!!」

「げ、なんて事言うんだ、お前!!」


大笑いを止めて慌てたように俺を見下ろす桃先輩に、ざまーみろって視線を向けて、

未だに俺の頭をいじり続ける菊丸先輩を見上げた。


「先輩、いい加減重いッス。」

「良いじゃん、良いじゃん!…って言いたいトコだけど、

 今日はおチビが良い子だから許してやろう。

 あと、キツイ時は言うから気にすんな。奢ってやんよ。」


桃だけなんて不公平だろ?

そう言って、今度は優しく頭を撫でられる。

こっちの方が嫌だ。

ペシ、とその手を払うと、先輩はむしろ楽しそうに笑った。


「いつも通りで良いよな?お前ら。」

「うぃッス!」

「…ッス。」


少し憮然とした面持ちで答える俺をもう一度笑って、先輩はレジの方へ向かう。

待っている間、にやにやと笑う桃先輩の視線に苛ついて「なんスか。」と聞いた。


「いや、お前ってわかりやすいと思ってよ。」


桃先輩の一言に、俺は顔をしかめて(不本意ながら)桃先輩を見上げる。

楽しそうに笑う桃先輩をじっと睨むと、

桃先輩は「おー怖い怖い。」とか言って俺の頭をグシャ、と撫でた。


「なんの事ッスか。」

「エージ先輩。

 先輩に気を遣ったんじゃなくて、奢られたくなかったんだろ?」


桃先輩の言葉に見上げる視線を驚いたものに変えると、桃先輩はまた豪快に笑い出す。


「わかりやすいぜ、お前。いっつも先輩の方見てるし。」

「…余計なお世話ッス。」


顔を再度しかめて視線を逸らすと同時に、菊丸先輩が俺たちの方へ帰ってきた。


「なんだよ桃。笑い声、レジの方まで聞こえてたぞー?

 ほら、奢ってやってんだから自分の分は自分で持つ!」


ホイホイ、と渡されたトレーを持って、空いてる席に座って食べ始める。

暫く雑談を交わしながら食べていて、もう殆ど食べ終わった所で菊丸先輩が俺の方を向いた。


「そういや、なんの話してたんだよ?」


まだ沢山残っているハンバーガーにがっついている桃先輩に話しかけても無駄と思ったのか、

菊丸先輩は俺の方にそう聞いてきた。

答えを返そうかどうか、少し考える。


「おチビちゃん?」


不思議そうな視線を俺に向ける先輩に、俺はニヤリと口の端を上げた。





「あんたを好きだって話ですよ。」





一応耳には入ってたらしい桃先輩が、驚きに目を見開いて持っていたハンバーガーをぼとりと落とす。

その拍子に呆然としていた菊丸先輩がハ、と意識を戻したように首を左右に振って、

おそるおそるって感じで言葉を発した。


「え、と。誰が?」

「俺が。」

「誰を。」

「アンタをって言ってるじゃないッスか。」

「…マジ?」

「マジッス。」


言葉の応酬をいくつか交わして少し冷静になってきたらしい菊丸先輩が、

視線を桃先輩に向ける。


「そんな話してたのか?桃。」

「あ、や、はぁ…俺が越前をからかってただけッスけど。」

「って事は、マジか。」


俺の言った言葉は信じてなかった訳ね、とちょっとため息をつきながら、菊丸先輩を見る視線は動かさない。


「で、返事。下さいよ先輩。」


あくまでも強気でいる俺を見て一度目を見開いた後、

菊丸先輩は少し赤い顔で、ニマ、と笑ってわしわしと俺の髪を撫でた。


「おチビちゃんが俺よりデカくなったら、考えてやるよ。」


…にゃろう。


「その言葉、覚えといて下さいね。」





まずはやっぱ、牛乳からかな。

そーゆー訳で、

覚悟しといて下さいね、菊丸先輩。









了。