後ろ姿を追いかける。

何処までも続く道を、必死に追いかける。




























On the way




























追いつかない。速い。

手塚、どうして置いて行くの?


「って、夢を見た。」

「悪夢だな。」


部室のパイプ椅子に座って昨日見た夢の話をした。

手塚は部誌を付けながらもちゃんと話を聞いていて、頷いている。

俺、置いて行かれてないよな。


「そうにゃんだよー。朝、汗びっしょりだった。」


手塚は気持ち悪かったーと、誰かさんみたく眉間に皺を寄せた俺の頭に掌を乗せ、

ゆっくりと撫でた。


「俺はお前を置いて行ったりしない。

 お前が遅いなら、時々振り返って待つ位はする。」


安心させるように、本当にゆっくりと。


「追い付きそうになったらまたさっさと行くんだろ。」


でも、手塚がそこまで甘やかしたりしないのをちゃんと知ってる。


「そうだな。」

「ケチ。」


唇を尖らせながら言うと、手塚は俺の額にデコピンをくらわせた。


「だっ!!何すんだよー!!」

「甘やかしすぎるのはお前の為にならない。」


楽しそうに笑う手塚を見て、俺は少し複雑な気分で笑みを浮かべた。


「甘やかして欲しい時だってあるっしょ?」

「だから、ちゃんと振り返るだろう?」

「そんなんじゃ足りないー!!!」


でもきっと、それだけで満足だったりするんだ。俺は。

そう思いながらも口では不満を述べてみる。

手塚は見透かしたように、また楽しそうに笑った。


「それなら、追い付いた時に褒美でもやろうか。」

「ごほーび?大歓迎!!」

「そうだな。額にキスをしてやろう。」


そんな事言っておきながら、間違いなくコイツは追い付かれるようなマネはしない。

わかっているけど、でも、ご褒美のために、何よりコイツに近づきたいから

頑張ろうって思うんだ。


「それなら頑張っちゃうよーん♪」

「あぁ、頑張れ。」


いつの間に書き終わったのか部誌をを閉じて手塚は立ち上がった。

追いつけない。追い付きたい。

追い越さなくていい。

隣に行きたい。


「もう帰んの?」

「…家に来るか?」


こう聞けばそう返ってくるのがわかってて俺は言う。

ずるい?

でもいいじゃん。

少しでも追い付きたいんだ。


「行くー!!!」

「早く支度をしろ。帰るぞ。」

「オケー!!」


せめてこんなとき位は、手塚の隣にいたいから。


「泊まってってもいい?」

「あぁ。ちゃんと連絡はしておけよ。」

「わかってるって。」

「帰るぞ。」


後ろ姿を必死で追いかけてでもいい。

長く長く続く道。

ずっとずっと同じ道の上、追いかけていく。

そうして、たまに俺を振り返って。

たまに引き返して俺にキスをして。

そしてまた置いて行かれても、

俺はきっと、すごく幸せ。



















end.