くすくすくすくす…

良いじゃん、良いじゃん。

脅かしちゃえよ!脅かしちゃえよ!

ターゲットは…アイツ!!!




























Counterfeit




























青春学園内にある宿舎にて行われている冬合宿2日目の夜。

夕食も食べ、2年メンバーは自分たちの寝る布団の準備をしていた。

いち早く布団を敷き終わった手塚は、辺りを見回して一人足りないことに気付く。


「菊丸はどうした…?」


手塚の放った言葉に、まだ布団の準備をしていたメンバーも準備の手を止めて顔を上げた。


「英二なら飲み物買って来るって言って出て行った筈だけど。」

「…1時間程前だな。」


河村の答えに腕時計を見た乾がそう返して、場がしん、と静まる。


「遠い所まで好きなのを探しに行ったんじゃないのか?

 コンビニまでちょっと離れてるし。」

「でも、もう1時間でしょう…?」


可能性を提示した大石に不二は心配そうにドアの方を見つめながらそう返し、

ゆっくりと立ち上がる。

立ち上がった不二を手塚が見上げると、不二はやはり心配そうに「探しに行ってくる。」と言った。


「にゃぁぁぁー寒かったぁぁーー!!」


だったら俺も…と、手塚が立ち上がろうとした瞬間、カラリと襖が開いて英二が姿を現す。

別段怪我をしている様子もなく、「あったかーい!」と、いつものようにニコニコと笑っていた。


「英二!何処まで行ってたの!?」

「ゴメンゴメン。ちょっと遠くまで行ってたんだよねー。」

「にしても遅いじゃないか。それに…どうして手ぶらなんだ?」

「俺が飲みたかったの、見つからなくってさー。」


みんなも心配かけてゴメンにゃー。と、英二は苦笑を浮かべながら辺りを見回す。

最後に手塚と目が合うと、嬉しそうに笑顔を浮かべた。

あまりにも嬉しそうなその表情に、手塚は面食らう。


「手っ塚ぁぁぁぁぁぁ〜!!!」

「うわっ!?」


目を合わせたまま、英二は手塚に飛びついてきた。

あまりに突然の出来事だった為、手塚は上手く対処出来ずに一緒に布団へと倒れ込む。

ばふっと間抜けな音が部屋に響いた。

部屋にいた面々は、突然かつ予想外の出来事に目を見開いて、呆然と見つめている。


「菊丸!!」

「手塚〜〜。」


ガバリと起きあがっても、英二は手塚から離れようとしないどころか、

「にゃぁぁ〜vv」とか言いながら嬉しそうに懐いていた。

英二(菊丸)がおかしい。

誰もがそう思って顔を見合わせる。


「え、英二?とりあえず手塚も困ってるみたいだから離れてやってよ。」


呆然としつつも流石みんなの良心。

こんな時でも、大石は明らかに動揺している手塚への対処(パートナーの管理ともいう)は怠らない。

大石の言葉に懐いていた顔を上げて大石の方に振り向き、英二は不思議そうに首を傾げた。


「何で困るの?恋人同士がいちゃいちゃするのは当然っしょ?」


ねぇ?と手塚に視線を動かした英二に、英二以外の全員が固まった。

勿論、手塚も含めて。


「恋人…?」

「手塚と、英二が?」

「そうなの!?英二!!」

「手塚…?」

「……………。」


半ば放心状態の手塚に乾が声をかけるが、驚きすぎて反応を返す事もままならないらしい。

肯定も否定もしていない為、英二はそれだけ言うとまた手塚にゴロゴロと甘え始めた。

暫くの沈黙の後、


「うにゃっ!?」


意識を取り戻したらしい手塚が、勢いよく英二を引き離す。

ベリッと音がしたのは、きっと気のせいではないと誰もが思った。


「…手塚…?」


少し寂しそうに見上げる英二をそれとなく遠ざけながら、手塚は眉間に皺を寄せる。

確かに、手塚と英二は付き合っていて、ちゃんと互いに好きだと思っているのだけれど。

誰にも言っていない為、こうして人前で抱きつかれる事なんて冗談以外であり得ないし、

公私混同をしない手塚を理解している為、英二が手塚に部活中に甘えたりすることは皆無。

誰にも言えない事に何も感じていないと言えば嘘になるが、

少なくともこんな風に突然英二がバラしてしまうとは思えなかった。


「お前は、誰だ。菊丸はどうした。」


暫くの沈黙の後に手塚が言った言葉に、英二は嬉しそうにしていた表情をくしゃりと歪めた。

その瞳からはぼろぼろと涙が流れている。


「ひど…酷いよ、手塚…!!俺、手塚に甘えたかっただけなのに…!!」

「え、英二!?」

「ちょっと手塚!!なに英二泣かしてるの!!」


それを見て動揺する皆をよそに、手塚は眉間に寄せた皺を増やす。


「少なくとも俺の知っている菊丸は、そんな事で泣きはしない。」


手塚の知っている英二なら、怒るか拗ねるか…もしかしたら笑い飛ばしてしまうかもしれない。

『菊丸英二』は、手塚の知る限り涙を簡単に人に見せたりしない。

手塚が英二の目を見ながら言うと、英二はまた悲しそうに顔を歪めた。


「じゃぁ、俺は誰なの…?」

「そうだよ、手塚。どう見たって英二じゃないか。」

「態度がおかしいのは認めるが、それで菊丸じゃないと判断するのはあんまりじゃないか?手塚。」


ぽろぽろと涙を流しながら英二の言った言葉に続き、河村と乾もそう言って手塚を見る。

外見だけは、確かに、どう見たって『菊丸英二』そのもの。

けれど、


「甘えたって、良いじゃんか。ずっと、誰にも言えなくて、ずっと我慢してたのに…。

 ホントはいつだって、手塚の側にいたいのに…!!」


手塚はそう言って抱きついきた英二を拒否するように腕を伸ばし、その身体を自分に近づけようとしなかった。

真剣な手塚の目が、英二を射抜く。


「てづ…。」

「菊丸を、何処へやった。」


そう言う手塚のあまりに冷たい瞳に、英二の肩がびくりと揺れた。


「…手塚。そんなに英二が偽物だって言い切るなら、それなりの理由があるんでしょう?」


手塚の冷ややかな態度に不二がさすがにムッとしたらしく、手塚を睨みながらそう言う。

こんな事あり得ない。とは思うが、彼が本物ではない確信が手塚にはある。

だから、心配なのは本物の『英二』のことだ。


「あるには、ある。」


ぽつりと手塚の言った言葉に、大石を始め乾も河村も…英二も、驚いたように目を見開いた。

ただ、不二だけは射るような目で手塚を睨み続けている。


「教えてよ。」


疑って強く言う不二に小さくため息をついて、手塚は自分の後ろ首を指した。


「昨日から、菊丸はここに絆創膏を貼っているんだ。それがこいつにはない。」

「…確かに、昨日から英二は絆創膏貼ってたよ。でも、そんなの、証明にならない。

 今張ってなかったとしても、怪我が治って剥がしたのかもしれないじゃない。」


不二の言葉に手塚は首を左右に振った。


「余程の事がない限り、剥がさない。

 何もないとすれば、それだけでこいつが菊丸ではないという事になる。」

「どうしてそういえるんだ、手塚。本当に怪我が綺麗に治ったのかもしれないじゃないか。」


不二と同じく後ろ首の絆創膏に気付いていた大石が、手塚に抗議するように言う。

大石に視線を向け、手塚は小さく息を吐いた。


「………菊丸は、怪我などしていない。」


しばしの沈黙の後ぽつりと呟いた手塚の言葉に、乾と不二は目を見開き、大石と河村は首を傾げる。

事の理由を理解した乾と不二は、『英二』に視線を向けた。

びくり、と『英二』の身体が揺れる。


「英二、首、見せてもらってもいい?」

「にゃ、ぇ、」

「別に構わないだろう?手塚と付き合っている事はお前がバラしたんだからな。」

「いや、でも…。」


じりじりと壁際に追いつめられていく『英二』を見ながら、手塚は本物の英二の事を尋ねる。


「菊丸を何処へやったんだ。」

「…。」

「おい!!」


手塚が強く言うと、『英二』は泣きそうだった表情を途端にス、とつまらなそうなそれに変えた。

驚いて目を見開く2年メンバーをよそに、ちぇ、と『英二』は口を尖らせる。


「つぅーまんないの。絶対騙されると思ったのにぃ〜。」


そう言った瞬間、『英二』の姿がぐにゃりと歪み、目の前には見た事もない幼い少女が立っていた。

手塚に不二、大石と乾と河村は、呆然と目の前に現れた少女を見ている。

『英二』が女の子になった…!?


「本物のこの人ならもうすぐ帰ってくると思うから心配しなくていいよ、おにーさん。」


手塚に向かってにこりと笑いかけ、立ち上がった少女はひらひらと手を振りながら窓から飛び降りた。


「!?」


驚いて手塚が窓に駆け寄るが、ガラスに腕を拒まれる。

今は真冬。

当然、窓なんて開けていない。


「なん、だったの…。」


呆然と呟いた不二の呟きは、おそらくこの場にいた皆のものだろう。











「たっだいまーーー!!ひーーー寒かったーー!!!」


全員が呆然とする中、襖がからりと開けられて高い声が部屋に響いた。

全員の視線が、当然のように彼に移る。


「え、何?どしたの、みんな。」


驚いたように目を見開いて、英二は持っていたビニールから彼のお気に入りであろう飲料水を出し、

それの口を開けながら、不思議そうに首を傾げた。


「英二。」

「ん?何?不二。」

「後ろ首に貼ってある絆創膏、剥がして良い?」


不二が言った途端、英二は飲もうとしていた飲料水を吹き出しそうになり、

苦しそうに身をかがめる。


「っっ!!!」

「大丈夫か、菊丸。」


咳き込む英二の背を軽く叩いてやった乾に、英二は手をひらりとあげる事でとりあえず返事をした。

暫くむせている英二を見守りながら、乾と不二はこっそりと後ろ首に絆創膏がある事を確認する。


「な、何で、そんな、急に。」

「うん、確認?」

「確認だな。」

「いや、何のかって!!ただ怪我してるだけだから…」

「いや、そこにあるのが手塚が付けたキスマークだと言う事はわかっている。」

「「キスマーク!?」」


驚きの声を上げたのは、大石と河村だった。

そんな二人に、不二は気付いてなかったの?と首を傾げている。

二人は顔を真っ赤にして思わず、といった感じに手塚に視線を向けた。

二人の視線を受けた手塚は、実にバツが悪そうに眉間に皺を寄せている。


「て、手塚…!!」


大石や河村と同じように顔を真っ赤に染めて、英二は手塚に視線を向けた。

パクパクと口を動かし、言葉にならない言葉がその口から溢れているように見える。


「……不可抗力だ。」

「な、何がだよ!!!!」


思わず後ろ首を押さえた英二と視線を逸らしている手塚を見て乾と不二は目を合わせ、

ふ、と笑みを交わした。









くすくすくすくす…

騙されなかったよ…?

つまんないね。…じゃぁ、もっと別の、さぁ?

次のターゲットは…

くすくすくすくす…















end.




目指せ!可愛い菊丸英二!!
というチャレンジ精神のもと、書いてみましたが…見事撃・沈★
私が書くと猫語に激しい違和感かつキモイな…ということで、偽物でした。
やっぱり英二は男の子らしい方が好きだ!