「あぁ、約束だ。」


そう言って微笑んだ顔は、怖いと思った第一印象を一変させた。

でも、すごく嬉しかったのに顔を覚えてないんだ。




























糸。




























「?」


クリスマス、恋人と会う約束をした帰り道。

おもちゃ屋のショーウィンドウにへばりついている小さな子供を見つけた。

黄色い帽子に黄色い鞄を提げて真っ白のコートとマフラーを巻き付けている姿は大きな雪だるまに見えなくもない。

それでも、いつもなら気にしない。

その日はなぜだろう…酷く気になって思わず立ち止まった。

少し赤みがかった短い髪が帽子の端からひよひよと跳ねていて、

寒いのか時々くしゃみをしながらもそこを離れる様子はない。

何を見ているのだろうと視線を追うと、小さなひよこの形をしたおもちゃが口をぱくぱく開けながら音を出している。

それをじっと見ながら、小さな子供は嬉しそうに笑っていた。


「それが欲しいのか?」


思わず声をかけて後悔した。

お世辞にも俺は子供に好かれるタイプではないし、これでは変質者と変わらない。

案の定小さな子供はびくりと肩をふるわせておそるおそる振り返ると、俺を見て少し怯えたような顔をした。

けれど、はっきりと一度頷く。


「そうか。」


俺がそう返すと小さな子供はまたおもちゃに向き直り、沈黙が流れる。

次に口を開いたのは小さな子供の方だった。


「500えんなんだ。」

「500円?」


突然言われた言葉に疑問を返すと、70cm 程下で小さな子供はうん、と頷いた。


「サンタさんね、にーちゃんとねーちゃんたちもいるから、おれは500えんまでなんだ。」


だから、みるだけ。

どうやらクリスマスプレゼントのことを言っているらしい。

サンタさんからの伝言よ、とでも親から言われたのだろうか。

小さな子供の言葉におもちゃの値段に視線を移すと、680円と書いてある。


「ほしいなぁ…。」


小さく小さく呟かれた声に思わず帽子の上から頭を撫でてやると、子供は驚いたように俺を見上げた。


「…おにいちゃん?」

「いつか、お前が一番欲しいものをくれる。」


俺の言葉を聞いた瞬間、それはそれは嬉しそうに小さな子供は笑った。

喜びでその笑顔がきらきらと光っている。


「ぜったい?うそつかない?」


俺が肯定を返すと、小さな子供の笑顔は更にきらきらと光った。


「じゃぁ、いちばんほしいものもらったら、おにいちゃんにいちばんにいうね?

 だからおにいちゃんもきいてね。」

「あぁ。」

「やくそくだよ!ゆびきり!!」


そう言うと、俺の小指を無理矢理自分のかなり小さなそれに絡ませて

ゆびきりげんまんっ!と子供は歌い出した。


「うそついたらはりせんぼんのーますっ!ゆびきった!!」


歌いきったのか、ぱっと小さな指をはなして子供は楽しそうに笑う。


「やくそくね!!」


小さな子供は両手を上げて俺の両手をぎゅっと握り、ぶんぶんと振った。

その行動に思わず恋人を思い出して頬がゆるむ。


「あぁ、約束だ。」


瞬間、照れたように笑った子供の頭を撫でて、迎えが来たらしいその子に別れを告げた。


「ばいばい!やくそくだよ、おにいちゃん!!」


手を振りながら親らしき人に駆け寄っていった小さな子供が視界から消えるのを見届けて、

自分も帰ろうと足を進行方向へ向ける。

ふと、地面に落ちている黄色い連絡帳らしきモノを見つけた。

おそらくあの子供のものだろう。

そう思って、届けてやろうと手を伸ばす。

わずかについていた土を払い、名前を確認しようと表紙を見て書いてあった名前に、俺は目を見開いた。




























「すっげーキレーだったなーー!!」


隣で興奮気味にはしゃいでいる恋人…菊丸に頷きを返しながら缶コーヒーのプルタブを開ける。

クリスマスはイルミネーションツアー!!!

そう約束していたので夕方からいくつか回って、ひとまず休憩しようと公園のベンチに座った所だ。


「あ、そだ。はい、手塚。」


少し照れ笑いを浮かべながら菊丸が鞄から取り出した箱は、俗に言うクリスマスプレゼントというヤツだろう。

気に入るかわかんないけど。そう言う菊丸に笑みを返しながらその箱を受け取る。


「ありがとう。…これは、俺からだ。」


缶をベンチの隅に置いて、俺も鞄から3つ、包みを取り出した。

菊丸は驚いたように目を丸くしている。


「え、3つも!?いいのに!!」

「いや、一つは元々お前のものだしな。」


くっくと笑いながら言った言葉に菊丸は不思議そうに首を傾げた。

開けてみろ。と俺が言うと、菊丸は首の角度を広げながら一番薄い袋に手を伸ばす。

中から出てきたものに、目を見開いた。


「え、これ、俺の…?」

「あぁ。」

「何で手塚が持ってんの!?ちっちゃい時になくして…。」


少し呆然としている菊丸に小さな真四角の箱を渡す。

意味を悟ったのか、菊丸は包みを破らないように丁寧に開けた。

出てきたのは、小さなひよこの形をしたおもちゃ。


「それは、サンタクロースからだな。

 最後の一つが俺からだ。」

「っ、え…!?





 おにいちゃん…!?」





呆然と呟かれた言葉。


「俺とお前は同じ歳の筈だが?」


からかうように言ってみても、

本当に驚いたらしい菊丸は呆然と目と口を開けたまま俺を見上げている。

かくゆう俺も、見た瞬間は信じられなかったのだけれど。


「なん、で…?俺、あん時幼稚園行った帰りで…。」

「俺がそれを拾ったのは一昨日だ。」


もしかしたら同姓同名の他の人の物かもしれない、と言って菊丸は連絡帳をぱらぱらと捲る。

1つのページで止まって、確かに自分のモノだと菊丸は言った。


「だってね、これ。俺欲しくて欲しくて一生懸命書いたんだもん。」


そう言って見せてくれたのは、酷く形がゆがんだひよこの形をしたおもちゃの絵。

今、菊丸の膝の上に乗っているモノの絵。

信じらんねぇ…と言って菊丸は他のページを捲り出す。時々膝の上のモノを見ながら。


「一番欲しい物は貰えたか?」


パタリ、と連絡帳を閉じたのを見て俺が問うと、1度目を見開いた後菊丸はにへ、と笑った。


「今ね、貰ってる途中。」


あ、これは家で開けるね?

そう言って菊丸は最後の包みと連絡帳とひよこのおもちゃを鞄にしまう。


「途中?」

「そ。もうこれは運命だよ、手塚。」

「運命?」

「俺の初恋、お前だもん。」


初恋、と聞いて嬉しいようなくすぐったいような不思議な気分になったが、

話が繋がっていないような気がして、俺は首を傾げた。

そんな俺を見ながら、菊丸は少し照れ笑いを浮かべて俺の手をぎゅ、と握る。


「約束、したろ?一番に報告するって。

 一番に報告するためは、ちゃんと隣にいてくんなきゃ。」


に、っと笑って菊丸は言った。


「深読みするぞ。」

「…どうぞ?」


じゃぁ、指切りね。

そう言って菊丸はあの時よりも随分と長くなった小指を、俺のそれに絡める。


「ゆーびきーりげーんま…」


歌い出した菊丸の絡まった小指を引き寄せて、寒さの所為で少し冷たいそれに口付けた。

驚いた顔で歌を止めた菊丸に、俺は微笑みを向ける。


「運命なのだろう?」


だったら、必要ない。

そう言って呆けている菊丸の髪を撫でた。





とてもとても、不思議な出来事。

あのとき…絡めた小指を放した瞬間から、

糸がずっと伸び続けていたのかもしれない。


その日を象徴する色の、細いけれど切れることのない糸。





メリークリスマス!糸の先の君!!










終。






Q:茶瓜さんこーゆー話好きなんですか?
A:大好きです★
ごーめーんーなーさぁぁぁぁいぃぃぃぃ!!!!
不思議話大好きなんです!!!そんで運命チックだともっと大好きなんです!!
でもオチてなーい!!!え、えへv
因みに小さなひよこの形をしたおもちゃを本気でねだったのは私です。
…今年の、誕生日に…欲しかったんですYO!!ちゃっかり買って貰いました★
パソコンの前でぴよぴよ鳴いて癒してくれますvv
というわけで、皆様は素敵なクリスマスを★
メリークリスマーーーース!!!


2004.12.25 茶瓜。