恋をすると人は変わるッていうけど、

これはちょっと違うと思う。




























七ちゃんの羽。




























「てぇーーづぅーーかぁっ!!!」

「どうした。」


語尾にハートがつきそうな勢いで声をかけた英二に、手塚はいたって普通に返事を返す。

どうやら慣れているらしい。


「今日は俺が腕によりをかけて作るからね!!」

「あぁ、楽しみにしておこう。」


英二の言葉に、手塚は少し嬉しそうに目を細めた。

それを見た英二も少し顔を赤らめながらえへへ、と嬉しそうに笑ってキッチンへ戻っていく。

クリスマスイヴのこの日、ボク達青学の元レギュラー陣は毎年恒例のクリスマスパーティーの為に手塚家に集まっていた。

何故手塚家かって、そりゃ広いからね。

今年は英二が料理を作るって張り切っているので、出来上がるまでボク達は軽いお菓子を食べながら談笑している。

毎年恒例だけど1つだけ違うこと、それは手塚と英二が付き合いだしたって事だった。

端から見ればバレバレだった二人がやっとくっついたって事でたまにあるこーゆーやり取りだって

温かい(?)目で見守りつつ和やかに進んでたんだけど…


「英二、何か手伝おうか?」


そう言ってキッチンに顔を出した瞬間、ボクはらしくもなく悲鳴を上げそうになった。


「あ、不二。大丈夫だよ、まだ時間かかるしー。」


まずは毛抜きから始めなきゃねー。

そう言って腕まくりをした英二に、震えそうになる身体を必死で押さえながら声をかける。


「え…英二?それ…?」

「ん?七面鳥だよ?」


知らないの?と、英二は可愛らしく首を傾げてみせるけれど、ボクとしてはそれどころじゃない。

勿論、クリスマスディナーに七面鳥の丸焼きは定番メニューだし、英二がそれを作ることは聞いていて知っていた。

でも、今英二の前に置いてあるのは七面鳥丸々一匹。

それはもう、新鮮そのものだろう…というか、つい昨日息の根を止めましたと言わんばかりの姿。

もっと明確に言えば、首を切り落としている以外は七面鳥そのものだったのだ。

当然、羽根もそのまま。


「それ、どうしたの…?」


恐る恐る声をかけたボクに、英二は頬を赤らめながらえへへ〜と微笑んだ。

…七面鳥の横で。


「だってさぁ、鳥インフルエンザとかでなかなか安心して食べらんないじゃん?

 手塚にそんなモン食べさせらんないもんね。」


頑張って育てたんだよ?と笑う英二はそりゃぁもう恋する乙女満開なんだけど、

なぁ、七ちゃん?と首のない七面鳥に笑いかける姿は笑えない。

ひきつった笑みを浮かべたまま、じゃぁ頑張って、とボクはキッチンを後にした。

そそくさとリビングのソファに座ってジュースに手を伸ばす。

今日のメイン、食べられないかも…。

そう思いながらジュースを飲んだ所で手塚が声をかけてきた。


「どうした?不二。」

「あ、いや…。」


余程ボクの顔が青かったのか、少し心配そうに。

そんな手塚に曖昧な笑みを返すと、手塚は眉間に皺を寄せる。


その時、




ブチッ

ブチブチブチッ





キッチンから嫌な音が響いてきて、状況のわかっている僕は思わず耳をふさいだ。

そんな僕を見て す、と手塚が立ち上がる。

妙な音に何だ何だと驚いているメンバー達に視線を送り、様子を見てくる、と手塚はキッチンに向かった。


「手塚!!」


毛抜きをしているだろう光景を見せるのはあんまりだ、と思ったボクは声をかけたけど、

手塚は一度振り返ってひらりと手を上げただけだった。


「菊丸…?」


手塚が英二を呼ぶ声がして、それっきり何も聞こえなかった。

聞こえてきたのは、羽を毟る音のみ。

暫くして手塚が戻ってきた。

呆然としたまま座っていた場所に戻ると、手塚に部屋中の視線が集まる。


「手塚…?」


なんて声をかけたらいいのか迷って視線を泳がせていると、手塚がふと顔を上げた。


「天使とは…実在するんだな…。」


手塚の言葉が放たれた瞬間、桃と越前君は飲もうとしていたジュースを吹き出して、

海堂とタカさんは持っていたお菓子を落としたまま固まって、

大石はどうしたらいいのかおろおろとしていた。

少し遠くを見るような目線でそう言った手塚に、今度こそボクは押し黙る。

何を言っているのか、さっぱり理解できない。


「それは菊丸のことか?」


一人おかしそうに笑っていた乾は眼鏡をくい、と上げながらそう手塚に聞いた。

それに手塚はこくりと一度頷く。

毛抜きをしている所為で羽が舞っているキッチンの真ん中にいた英二が手塚には天使に見えたらしい。

くらり、と目眩に襲われそうになった。

とんだ英二馬鹿だ。

手塚には凄い発言をした自覚がないらしく、ゲホゲホと苦しそうに咳をする桃と越前君を見て

普通に「大丈夫か?」と心配していた。


「それで、英二は何をしていたんだ?」


意識を取り戻したらしい大石が手塚に尋ねると、手塚はハッとしたように大石を見た。


「見忘れたのか?」


その一言に手塚がバツの悪そうな顔をする。

鬼部長が聞いて呆れるよ…。

もう一度確認してくる、と言って手塚は立ち上がった。

それと同時に英二がキッチンから顔を出す。


「手塚、燃えるゴミって何処に捨てればいい?」


にこやかに微笑む英二の手には、七ちゃんの羽が入ったゴミ袋。

やっぱり今日のメイン、ボクは遠慮しよう…。

頬をひきつらせたままボクがそう思っていると、手塚が英二の肩に手を伸ばし、

服に付いていた七ちゃんの羽を取って微笑んだ。


「あ、ゴメンゴメン。ありがと、手塚。」

「いや。燃えるゴミならそこだ。」


ほんわりとラブラブオーラを醸し出しながら手塚がキッチンの奥にあるゴミ箱を指差すと、

楽しそうに笑った乾が英二に何をしていたんだ?と聞く。


「ん?どして?」

「いや、手塚がお前が天使に見えると言っていたんでね。」

「え…。」


手塚の言葉を聞いた瞬間、カーッと英二の頬が真っ赤に染まった。

それを見たみんなは英二と手塚をからかっているけど、ボクはそれどころじゃない。

お願いだから英二、早く七ちゃんの羽を捨てて…!!!!





切実なボクの願いはなかなか叶えられることなく、

ラブラブな手塚と英二の間にある七ちゃんの羽に一人涙を流してみた。










終。






メリクリ★(黙れ)
ちぃから『七面鳥の羽を毟る英二』と、ネタをいただきましたので、こうなりました!!
馬鹿っぽい塚菊がしたかっただけなんです!!
…ごめんなさい!!!!!
でも、本当はそうなんですよね。見ないだけで。
鶏肉を見ながら鶏さんに感謝をしましょう!
牛肉を見ながら牛さんに感謝をしましょう!
豚肉を見ながら豚さんに感謝をしましょう!
猪肉を見ながら猪さんに感謝をしましょう!
(他の肉魚略)って事で…。(違)
ではでは一日早いですが、皆様メリークリスマス!!

2004.12.24 茶瓜。