Full Moon
















明かりの灯されていない暗く広いリビングで、

ひやりとした空気をまとったフローリングが、

僅かに扉の開けられた部屋から漏れる、微かな光を染み込ませている。

その中で、無惨に幾つも破られた真白な紙が、

あちらこちらでぼんやりと光を発していた。

記されていた筈の文字が読み取れないほどにボロボロに、

ぐちゃぐちゃになった上、破かれている真白な紙。

散乱している紙の先、僅かに開いている扉から漏れる光は鈍く、

ぼんやりと黄みがかっている。

人工の光が灯されていない部屋はけれど明るく、

日に焼けているはずの肌は一見不健康な程に青白く見えた。

僅かに弾む息は不規則に揺れ、助けを求めるように回された腕は

筋肉に縁取られた肌に引っかかるように掴まっている。

抱え上げられた足が小刻みに震えて、限界を訴えていた。

程良く筋肉のついた背中から滴がぽつりぽつりとこぼれ落ちては、

シーツに染み込まれていく。

染められていない天然の赤茶がセットされた時よりも奔放に跳ね、

肌に近い部分は湿って頬や額に張り付いていた。

ベッドサイドに置かれたノンフレームの眼鏡は、

ひびが入っていながらもどこか大事そうに置かれている。

不意に大きく体が跳ねて、

赤茶の髪が乱れることも気にせず首を激しく左右に振った。

引っかかるように掴まっていた指がしっかりとその身体を掴み、

目をぎゅう、と瞑る。

包み込むように回されていた腕が、震える背を強く強く抱きしめた。


「…っ」


音にならなかった声は喉を抜けて空気だけが外に出る。

喘ぐ息が交差して、吸い寄せられるように口付けをした。

額に瞼に耳に鼻に唇に。

両手で頬を包み込んで、何度も。

首筋を舐めると、塩の味がした。

ピクリと震えて仰け反ると同時に、ハッと息を飲む気配がする。

掠れた声で、頭上から小さく小さく声がした。


「き、ん…。」


荒れた息のまま、仰け反ったまま見上げている。

つられるように見上げたて見えたのは、


汗を反射して金に染まる肌と、

多分に含まれた水分が光を通して金に染まっている瞳。

そして、その後ろで煌々と輝く、黄金の月。


ゆらゆらと揺れるその虚ろな金の瞳は、

まるでその光を浴びようとするが如く一心に光源を見つめ続けている。

喘ぎ続ける息のまま上下するその胸元も、黄みを帯びていた。

掌でゆっくりと撫でると、身体が跳ねる。

けれど、視線は月に向けたまま。


「満月…。」


魅入られたように尚も見つめ続けて無防備に晒されたその首筋に、

強く強く吸い付いて痕を残す。

高く喘ぐ声すらも感じられるよう、湿った痕に耳を寄せた。





どうか、この先も共に在れますように。










了。