近づく時間。心臓は静か。

吐き気も頭痛も眠気もない。




























カウントダウン。




























…60





ゆっくりと目を閉じる。

恐怖など微塵もなかった。

今は、とても幸せだから。


『英二ー!』


不二の声が木霊する。

凄く凄く大好きな親友。これからも、ずっと。

プロジェクト、よろしくね。


『英二。』


大石の声が、木霊する。

大石がいたから、ここまでテニスを好きになれたと思う。

俺のパートナーは、永遠にお前だけだよ。





…50





『英二!!』

『エージ先輩!』

『菊丸先輩。』

『菊丸先輩?』

『『『『英二っ!!』』』』


家族とか後輩とか仲間とか、みんなの声と笑顔が頭の中で駆け巡って、

最後に一人のもとへたどり着く。


『英二…。』


手塚の声が頭の中に木霊した。

誰よりも大好きな人。

世界中で、きっと、一番に。

離れてても、幸せだった。

最期まで側にいてくれて、嬉しかった。


これが走馬燈なんだろうかと、英二はぼんやりと考えた。





…40





最後に泣いたのも、

最後に抱きしめてもらったのも、

最後に好きだと言ったのも、

最後に愛してると言ったのも、

最後にキスをしたのも、

あの時だったけれど。


大好きだったよ、手塚。





…30





「英二っ!!!!!!」


大きな手塚の声に驚いて英二が目を開ければ、酷く焦った様子で部屋に入ってくる手塚と、

その後ろで同じように焦った表情をしている不二と大石が目に入った。





…20





「英二っ英二っ!!!!」


嫌な予感がしたんだ。

今出かけてしまえば、もう一生会えなくなるような、予感が。


手塚は英二の手をぎゅっと握りしめる。

手塚の声を聞きつけて、英二の家族も部屋へ駆けつけた。

父親に母親、祖父に祖母、長男長女次男次女。

全員。





…10


…9


…8





ベッドまで駆け寄ってきた11人に、英二は順に目を向けて微笑む。

お礼を言いたかった人全員が、今、目の前にいる。





…7


…6


…5





「         」





…4


…3





ありがとう。


英二の言葉は声には出なかったけれど、全員の目が見開いたのでちゃんと伝わったのだと思った。





…2


…1





英二は一度微笑んで、目を閉じた。




























0。




























「英…二?」


手塚が握っていた英二の手が、パタリとベッドに落ちる。

空虚を掴む手塚の手が、カタカタと震えていた。

声をかけてもピクリとも反応しない。

不二が手を口元に持ってゆく。














「息…して、ない。」



















それは、英二の死を意味していた。



















Time over...


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