学校へ行くと、事情を知った仲間達が俺に駆け寄ってきた。

特に大石なんて、今にも泣き出しそうな程心配してくれてる。

俺が謝ったら、大石にしては珍しく、頭を殴られた。

「馬鹿なこと言うな。」って。

みんなも、心配そうに、俺たちを見てくれてる。

やっぱり、みんなが大好きだ。




























カウントダウン。




























昼休憩になると、桃城と海堂が英二の教室まで来た。

中学2年の時からずっと同じクラスの不二と英二は共に苦笑して迎える。


「エージ先輩!!」

「菊丸先輩…。」


それぞれ態度は違えど、英二のことをすごく心配しているのがわかる。

それがやっぱり嬉しくて、英二は思わず笑みを零した。


「桃も海堂も、そんな心配しなくたって今は大丈夫だよん。

 それよりお前ら、俺が抜けたからって全国逃したら許さないかんなー?」


英二が意地悪な笑みを向けて言うと、桃城と海堂は少し顔を歪めた。

『俺が抜ける』その言葉は英二がもうテニスができないことを物語っていたから。


「勿論ッスよ。なぁ、マムシ!!」

「マムシじゃねぇ!!…当然です、先輩。」


それでも力強く頷く後輩を見て、英二はもう一度笑った。

しかし、昼も食べずに来たことを聞くと、二人の頭を小突いて怒った。


「お前らなぁ、昼食べないともたないだろー?」


そして、押し返そうとする英二に苦笑を返して、桃城と海堂は教室を出た。


「んじゃ、失礼しましたー!!」

「菊丸先輩、お大事に。」


それぞれに正反対の行動をする後輩の後ろ姿を見守りつつ、

英二はゆっくりと床にしゃがんだ。


「大丈夫?」


不二は英二に手を差し伸べる。

差し出された手を取りながら、英二はにこりと微笑んで立ち上がった。


「ちょっと立ち眩みってヤツ?大丈夫だよん。

 んじゃ、職員室行ってくんね。」

「うん。行っておいで。」


英二の手には二つの紙が握られていた。

一つはテニス部の退部届け。

もう一つは…




























「エージ先輩タオルくださーい!!」

「ほいほーい!!桃さっき足ふらついてたぞー?

 無理すんなよー!!」

「了解ッス!!」


ベンチに座っていた英二は走ってきた桃城にそう言いながらタオルを投げ渡す。

テニス部のマネージャー。

それが、テニス部を退部した英二の選んだ新しい場所だった。

勿論、無理は出来ないからタオルの用意だとか、ドリンクの用意だとか、

そんな簡単で比較的楽に出来る仕事。

日光の当たりすぎは要注意なので、殆ど日陰のベンチに座って

みんなのプレイを見ながらタオルを畳んだりしている。

時間の流れは早いもので、あの死の宣告から1カ月が経過していた。

体調は今のところ問題なし。

練習をずっと見ているだけだから、

テニスがしたくてしたくて仕方がなくなる時もあるけれど、

みんなの近くにどうしてもいたかった。

だから、少しでも近くにいられるこの位置を選んだ。


「英二。」


大石が英二を呼ぶ。

一応マネージャー。

だから、みんなを観察して大石にその報告を逐一した。

乾のデータと英二の目。

それらを重ね合わせてより正確な情報を手に入れることが出来るようになったのだ。


「桃、ちょっと疲れ溜まってるかも。明日1日少しメニュー軽くしてやって。」

「わかった。他は?」

「後は異常なしかにゃ〜?

 あ、大石余裕でしょ?もうちょっときついメニューでも良いんじゃない?」

「お前な…。」


意地悪く言ってみると呆れたような苦笑が返ってきた。

こんな時間が大好き。

テニスが出来なくても、すごく幸せ。









英二の命が消えるまで、あと約11カ月。









続く→