04:手料理。




























「…何で?」

「そう言われてもな。」

「好きじゃないよね?」

「好みはしないな。」

「俺、上手く作れたことないのに…。」


昨夜の賭の罰ゲーム。

甘いものがあんまり好きじゃない国光に、

わざと翌日のおやつ作りを任命。


「食感まで完璧だし。」


確か、高校でした調理実習では力一杯失敗した記憶がある。

それから何度か作ってみたことはあるけど、上手くいった試しはない。

基本的に国光は料理が上手いとは言いがたいし、

これまで何度も何かと作らせてみたけど、

どれもお世辞にも美味しいとは言えないものが出来あがってた。

どんな失敗しても笑顔で食べてやろうと思ってたのに…。

これは、予想外すぎる。


「こっそり練習した?」

「あの後そんな余裕があったと思うのか。」


賭は酒に酔った末に言い出したことだし、

国光も酔ってたからこそ、のってくれたんだと思うし。

結構な量飲んでただけに、あの後そんなことが出来たとも思えない。

第一、材料を買いに行ったのはついさっきだ。

それも、俺も一緒に。

おそるおそる一口だけかじったそれを、口の中に放り込む。

畜生、めちゃくちゃ美味しいじゃん。


大きな皿にちょこちょことのせられているそれは、

綺麗な小麦の焼き色が付いた、見た目も味も完璧な、

少し小ぶりのシュークリーム。


シューを上手く焼くのは難しい。

作りなれてる人ならともかく、俺だって何回も失敗したし。

それが、カレーすらまともに作れない国光が、

何だってシュークリームは完璧なんだ!?

欲目か何か知らないけど、

いっそ店に置いてあっても違和感を感じないくらい完璧。

味も完璧。

ちょっと悔しいけどやっぱり美味しくて、

もう一つ、と手を伸ばすと、国光が皿を俺の方に移動させた。


「俺はいらないから、全てお前が食べろ。」

「うん、もらっとく。めっちゃくちゃ美味いよ、国光。」

「そうか。」


俺がそう言うと、国光は少し照れたように笑う。

お、珍し。


「今度から休みの日は国光にお菓子作ってもらおっかな。」

「…勘弁してくれ。」


おそらく材料の甘い香りからして少し苦手な国光が、

嫌そうにそう言った。


「意外な才能開花かもよ?」

「必要ない。」

「いーじゃん。俺の為に、とか。」


な?と催促するように見上げて言えば、

付けていたエプロンを取りながら苦々しい笑みが浮かぶ。


「お前が作れば良いだろう。」

「えー?これに関しては国光の方が上手いかもじゃん?」


実際シューが上手く焼けた試しはないし。

そう思って言えば、国光は少し不思議そうに俺を見た。


「そんなわけがないだろう。

 お前の作るものより美味いものはない。」




シュークリーム、

国光がいない時にもう一回練習してみよう。

甘さは勿論、かなり控えめで。









終。