02:洗濯物。




























「いい匂い。」


鼻先を擦りつけると、くすぐったそうに身を引く。

離れないようにがっちり腕を掴んで、ふんふん、と香りをかぐと、

困ったように頭のてっぺんに掌が乗せられた。


「英二。」

「何使ってんだろー?俺この匂い好きだなー。」


合宿から帰ってきた国光にへばりついて、その服の香りをかぐ。

香水とかの匂いは苦手だけど、この匂いは好き。

おそらく汗をかいた後に着替えてから帰ってきただろうから、

まだ服に残っている香り。

洗剤か、柔軟剤か。

多分、後者だろうけど。


「今度合宿行ったときさ、聞いてきてよ。」


いい匂いーと機嫌を良くして国光を見上げると、

少し複雑そうな視線と目が合った。

おや?


「どした?」

「いや。」


俺の問いに首を左右に振ることで答えて、国光は肩に提げた荷物を下ろす。

それを受け取り部屋の中で鞄を開けて、汚れ物を洗濯機へ。

ポポイってね。

今日はすっごく晴れてるから、今から洗濯しても綺麗に乾くだろう。

そう思って、計量スプーンに洗剤をすくう。

と、突然後ろ首に柔らかな感触。

思わず仰け反って、鳥肌の立った腕をさすった。

振り返れば、少し不機嫌そうな国光が立っている。


「失礼なヤツだな。」

「気ー抜いてる時にすんなよ!お前が悪いっての。」

「宣言すればいいのか?」


そういう問題じゃない、と言う前に、するぞ、と囁かれて首に唇が触れた。

ぴく、と反応を返す俺に、国光は楽しそうな視線を向ける。


「お、おま…!!」

「宣言しただろう。」

「返事する前にすんなーー!!」


一発殴ってやろうと手を上げると、国光の目が小さく見開かれた。





バサー。





洗剤を持っていたことを、忘れてました。

計量スプーンですくっていた分だけだから量はしれてるけど、

頭から被って真っ白。

床も洗剤まみれ。


「国光…。」


恨みがましい視線を原因に向けると、

ヤツは柄にもなく肩を震わせて笑いを堪えてやがる。

今度こそ怒りにまかせて一発肩を殴ってやると、

やっと笑いの収まったらしい国光が、俺の髪に手を伸ばした。


「風呂だな。」


パタパタと俺の髪に付いた洗剤を払いながら、国光は少し嬉しそうに笑う。


「人の不幸を笑うなよ、ばぁか。」

「挨拶もろくに出来ないヤツに、そんなことを言われたくはないな。」

「はぁ?」


挨拶ぐらいちゃんとするぞ。失礼な。

と、思った所で気が付いた。

あぁ何だ。それで拗ねてたわけ?可愛い奴ー。

小さく笑うと、国光はバツが悪そうに洗剤を払う手を少し荒くした。


「ゴメン。…お帰り、国光。」

「あぁ。」


頬に唇を寄せてそう言うと、柔らかい視線が返ってくる。

2週間ぶり、だもんね。

服の香りに誘われて、そんな一言も忘れてた。


「原因はお前なんだから、責任は取れよ。」

「わかっている。」


小さく笑って、洗剤を付けてやれ、とばかりに抱き付いた。





とりあえずの洗濯物は、洗剤まみれの俺と君って事で。









終。