03:鉄格子。




























出して。

出して。

ここから。

ここから。

嫌じゃない。

嫌いじゃない。

でも、でも、でも。


「どうした?」


その優しい声も、

誰も見たことがないような柔らかな表情も、

大好きだよ。

大好きなんだ。

でも、でも、でも。


「英二。」


首を、左右に振る。

出して。

出して。

腕を、伸ばそうとする。

出して。

出して。

けれど、腕を伸ばすことすら出来ない。

出して。

出して。


それはまるで、鉄格子のような腕。

俺が出ることを阻む、腕。


出して。

出して。

ここから。

好きで好きで仕方ない、

君の、腕から。


「英二…?どうして、泣いている…?」


雁字搦めになる前に。

君に、溺れてしまう前に。

抱き寄せられていた腕が離れて、

俺の瞼に触れる。

片腕は、緩く腰に。

柔らかに添えられただけの腕からですら、

出ることが出来ない。

出して。

出して。

ここから出して。


身体が、恐怖に震える。

溺れていると、雁字搦めになっていると。


嫌じゃないけど、嫌だ。

大好きだけど、駄目だ。

そう、駄目だ。

出して。

頼むよ。

出して。

ここから。

君の腕から。

開けてくれないと、

俺は一生、出られそうもない。

ひんやりとした鉄の格子に、縋ってしまう。

心地よくて、自分からは、もう。


「何に、怯えている…?」


君であり、俺にだよ、手塚。

冷たい冷たい、鉄の格子。

そこにある体温を知ったなら、もう。









終。