01:溢れかけているモノ。




























「手塚。」


この感情に付ける名など、ずっとずっと前から知っている。

もう、どれほどになるだろう。

降り積もるように、積み重なるように、

込み上げるように、増え続けた感情。


「どうした。」

「いつも見てるよね。」


そう言われても、反論など出来ないほど。


「そうだな。」


小さく笑うと、不二が驚いたように目を見開く。


「どうしたの、随分と素直じゃない。」

「お前に隠しても仕方がないからな。」


俺の答えに、不二は、あっそう。と少しつまらなそうに言った。

暫く沈黙が続いて、不二は俺と視線を同じにする。


「君には、勿体ないくらいだよ。」

「だろうな。」

「手塚、面白くない。」


不満げにそう言った不二を見やり、意識して眉間に皺を寄せた。


「俺で遊ぶな。」

「君以外の誰で遊べって言うの?

 まったく、告白も出来ない根性なしのくせに。」


何が言いたいんだと不二を見る視線をきつくすると、

不二はふ、と楽しそうに笑って、視線を戻す。


「それが溢れた時、君がどうするかが見物だよ。」


不二を呼ぶ彼の声がコートに響いて、

不二は相変わらずの笑顔を浮かべて彼のもとへ向かった。

仲良さげに肩を組む二人に視線を向けて、俺は小さく口の端を上げる。


「さぁな。」


口に出してしまえば溢れてしまうほどの、それ。

溢れるのは、口に出すのは、いつなのか。









終。