大好きで大好きで、息が出来ないよ。




























人工呼吸。




























「今俺が死んだら手塚の所為だかんな。」

「どうして今お前が死ぬんだ。」


ゆっくりと玄関を閉めて俺の方に向き直った手塚は

意味がわからないと首を傾げた。


「心臓破裂と呼吸困難で。」


そう言って、俺は俺は笑う。


「すっごい、幸せっ!!」


飛びつくように抱きつくと、

困ったように、でもちゃんと受け止めてくれる人。


「幸せで死にそうなのか?」

「そだよ。ドキドキしすぎて、死にそう。」


くすくすと笑いながら言うと、

手塚はゆっくり俺の唇に自分のそれを重ねた。


「お前に死なれたら困るからな。」


人工呼吸だ。と言って、手塚は靴を脱いで自分の家にあがった。

久しぶりの休み。

せっかくのデートの約束を突然の雪に襲われて、

急遽誰もいない手塚の家に遊びに来た。

ゆっくりと歩くいて行く手塚を俺は呆然と見送る。

ばくばくばくばく。

本当に、死んじゃうよ。

ついてこない俺を不思議に思ったのか、手塚が俺を振り返った。


「英二?」

「俺、本当に死んじゃう…。」


ばくばくばくばくばく。

赤面して呆然と立っている俺を見て、

ふ、と笑みを浮かべた手塚は俺の頬を撫でる。


「死なれたら困ると言ったのに…逆効果だったようだな。」


酷く楽しそうに、愛しそうに。

ばくばくばくばくばくばくばくばく。

いつもはこんなに優しくないくせに、どうしたんだ。

撫でていた手を離して、俺の手を握る。

そして、俺の手の甲に口付けた。

本当に、手塚か!?って位、甘い行為。

俺の心臓は、本当に死にそうな位跳ね上げる。


「て、づか。」

「先に上がっておいてくれ、英二。」


相変わらず楽しそうに微笑んでいる手塚は、

飲み物を入れてくる、とリビングの扉をくぐった。


「え、ぁ、うん。」


そして俺は、跳ね上がったままの心臓と一緒に手塚の部屋に向かうため、

足を動かした。



























「死ぬ、ホント。」


ボスッと音を出してベッドに飛び込んだ。

ベッドは俺の指定席。

座り心地も寝心地も最高!!だから。


「どうしたんだろ…手塚。」


ここに来る途中、手塚が手を繋ぎたいと言ってくれた。

そして、すごく綺麗な笑みで微笑んで、

俺に「好きだ」って言ってくれた。

いつもとは違う、酷く甘い表情と行為。

嬉しすぎて、頭が混乱している。

ついでに心臓もまだおさまってはくれない。


「でも、幸せ〜!!」


にゃーっと叫んでごろごろとベッドを転がっていると、手塚が戻ってきた。

手には、コーヒーとココアを乗せたおぼん。


「ココアで良いだろう?」

「もち!!ありがとっ!!」

「あぁ。心臓と呼吸は大丈夫か?」


床に座ると、ココアを俺に差し出して手塚は言った。

いたずらっぽい、楽しそうな笑みを顔に乗せて。

付き合うまで、手塚がこんな表情するなんて知らなかった。

結構冗談が通じるって事も、意外と意地悪だって事も。


「どっかの誰かさんの所為で、大丈夫じゃありませーん。」

「何だ、もう一度人工呼吸が必要か?」


戯けて言った俺に合わせて、手塚も冗談交じりにそう言った。


「ホントに、俺を殺す気かよ。」


そう思ったので言葉にすれば、手塚は尚も楽しそうに笑っている。


「それ位で死なれては困るな。これ以上手が出せない。」


さらりと言われた言葉に俺の動きは思わず止まる。


「セクハラですか。」

「愛だろう?」


くすくすと笑い合って、コーヒーとココアをそれぞれ飲んだ。

甘くて美味しいココア。

ほろ苦いコーヒー。

ふと目が合って、どちらからともなくキスをした。


「苦い。」

「甘い。」


お互いに文句を言って、

ゆっくりカップを机に置いた。

ドキドキするけれど、心臓は大丈夫そうだ。

そうしてもう一度キスをして。


「良いか?」


確認してくれる手塚が大好き。

俺のこと思ってくれてるって、はっきりわからせてくれる行為。

俺に負担がかかることは、わかりきっているから。


「ん。」


照れてはっきりとは返事できないけれど。

ドキドキはゆっくりと心地よい程度に続く。

好き。大好き。

手塚の唇が俺のいろんな所に触れていく。

額に、瞼に、鼻に、頬に、唇に。

柔らかく啄むようなキスをすると、手塚はいったん顔を上げた。


「手塚…?」

「愛してる、英二。」


柔らかい、柔らかい笑顔。

きっと、部の連中が見たら驚きすぎて部活どころじゃなくなる位、

甘い、笑顔。


「俺も…愛してるよ。」


その笑顔に、俺も精一杯の笑顔を返せば、すぐ後ろにあった手塚のベッドに寝かされて、

手塚が上からのぞき込む。

そして、柔らかいさっきまでのキスとは全然違う、

深い深い、情熱的なキスが降ってきた。


「っ、…ふっ…。」


息が苦しくてくぐもったような声が出る。

唇を少し開ければそこから手塚の舌が入ってきて、俺を翻弄する。

反射的に逃げようとしても、追いかけられて、絡めてなぞって。

気持ちよくて、ドキドキは大きくなる。

必死で手塚のキスに応えていたけど、そろそろ息が苦しくなってきた。

限界を告げるのに、手塚の髪を引っ張る。

すると、少し名残惜しそうに、軽くキスをして手塚が離れていった。


「大丈夫か?」


色っぽい目線で手塚が俺に聞く。

カッコイイにゃぁって思わず見惚れてしまうと、

手塚の目は心配そうなそれに変わっていた。


「英二?」

「ぁ、うん。だいじょぶ。」


ドキドキドキドキ。

見惚れていたことに照れて、ドキドキはまた少し大きくなった。


「…心臓は?」


心配そうだった瞳をすっと細めて、少し意地悪で色っぽい目が俺を射抜いた。

そんな表情、反則。

ドキドキは、さっきの比じゃないほどに跳ね上がる。

あぁ、もう、死んでもイイかも。って位に。

でも、それを言うのはなんか悔しくて。


「ぜんっぜん大丈夫じゃない。死んじゃうかもね。」


だから、もっと人工呼吸してよ。

そう含みをもたせて手塚の首に腕を絡めて言った。

すると、手塚は一瞬だけ驚いたように目を見開いて、

俺の言いたいことを理解したのだろう、すぐにさっきの意地悪で色っぽい目に変わる。


「それは困るな。」


くすくすと楽しそうに笑って、手塚は俺を見た。

それを見て、俺はゆっくり目を閉じる。

少しして、手塚の唇が甘く深く重なった。




























手塚がいないと、俺、本当に死んじゃうかも。




ふ、と目が覚めて手塚の寝顔を見ながら思ったのは、そんな事。




「人工呼吸なんて本当はどうでもいいんだ。

 手塚がいれば、俺はそれで良いんだよ。」


そう呟いて、手塚の瞼にキスをした。




















end.