All are mine.





























木の葉と葉の間から差し込む光がゆらゆら揺れて、うたた寝を誘う。

昼休終了10分前、その誘いに乗ろうと寝転ぶと、

2階の窓から覗き込むように体を軽く乗り出した不二と目が合った。

寝転んだままひらひらと手を振ると、不二はクスリと笑って窓から引っ込む。

ゆらゆら揺れる光と陰が心地よくて、目を閉じてウトウトとしだした。


「菊丸ッ!!」


心地よい空気も吹き飛ばすような怒号で、頭上から名前を呼ばれる。

慌てて飛び起きて見上げると、さっき不二がいた窓から手塚が覗いていた。

どうやらサボる気満々な俺の意志を、不二がご丁寧にも伝えたらしい。

真上からの日差しが手塚の眼鏡に反射して乾みたいだ。ぷっ。

手塚の隣の窓から覗いた不二が、楽しそうに笑ってる。

手塚の声に反応したみたいに、上下左右、様々な場所の窓がカラカラと開きだした。

不二の上の階から、つんつんと立たせた髪がひょいと覗く。


「何やってんスかぁ〜?エージ先輩。」


桃の横に、荒井に池田に林も覗いてる。


「昼寝!」


ピースの形にした手を上に伸ばすと、桃、荒井、池田、林、その下にいた不二も笑った。

桃達の隣の教室から何気に見ていた海堂は、ふん、と一度息を吐く。

手塚は憮然とした怒り顔のまま。

不二と手塚がいる隣のクラスから顔を出していた乾と大石、タカさんは苦笑してる。


「英二、早く戻らないと授業始まるよ。」

「今日はサッボリー!」


タカさんの言葉に答えると、桃が顔を出してる窓の更に上の階の窓がすごい勢いで開いた。


「くぉら菊丸!!!何言ってんだい!さっさと教室に帰りな!!」


一年の教室にいたらしいスミレちゃんが、さっきの手塚よりも大きな声で怒鳴る。

苦笑組は更に苦笑を深くして、スミレちゃんの隣の窓から見ていた1年トリオは

あまりの大声に耳を押さえながら唸っていた。


「うわ!スミレちゃんいたの?」


慌てて笑顔を向けながら言うと、

一年トリオの横で軽く見下ろしていたおチビがふ、と息を吐く。


「あーーー!!今、あきらかに見下した溜息付いただろ、おチビ!!」


口が動いてるのが見えた。

『ま・だ・ま・だ・だ・ね』

だってよっ!おっチビのくせにーーー!!


「菊丸。」


さっきよりはずっと落ち着いている手塚の声が、上から降ってくる。

目を向けると、戻れ、と視線で促された。

んー。すぐ帰るには、この状況は惜しい。


手塚と、その横の窓から見てる不二、隣の教室から覗いてる乾、大石、タカさん。

不二の上の窓から見てる、桃、荒井、池田、林。

その隣の教室の中から何気なく見てる海堂、

桃の上の窓から見てるスミレちゃんと、その横の窓にいる一年トリオと座ったままのおチビ。


「青学メンバーの視線、独り占めー。」


笑いながら言うと、みんなキョトンとした。

手塚は眉間にしわを寄せて、不二は笑い出したけど。


「俺って愛されてる!」


更に笑う不二とは対照的に更に眉間にしわを寄せた手塚は、

もう一度、今度は声に出して戻れ、と言った。

それと同時に、授業開始5分前のチャイムが鳴る。

仕方ないな、と、弾みを付けて起き上がった。


「んじゃ、そっち戻るな!」


ひらりと手を振りながら言った俺の言葉を皮切りに、

他のみんなもそれぞれの教室へ、席へ、戻っていく。

ただ一人、動いていなかった手塚と、駆け出す直前目が合った。





「てっづかー!」


階段を駆け上がって、教室の手前にいた手塚にタックルをかます。

それなりのダメージだったらしく、思い切り顔を顰められた。


「菊丸、遅れるぞ。」

「ん、戻るよん。」


その前に、と手塚の頬にキスをする。

周りに人がいないのは確認済みだもんね!と。

驚いたように目を見開いた手塚から一発チョップを食らって、

軽く跳ねながら教室に戻った。

手塚がチョップ、ってあたりで動揺具合がわかるよな、うん。





昼休憩にわざわざ来てくれたらしい手塚に、

ありがとうとゴメンと、俺からの愛を込めて。










了。