消え失せた階段の変わりに現れた真っ直ぐにのびる道を見て、

俺は立ち上がる。




























一段飛ばし。




























言えなかった言葉をはっきりと告げられた所為だろうか、

甘い声が響いて音を上げ続け、激しい痛みを伴っていたココロの穴は途端に静かになった。

思っていたよりも、辛くない。

それはきっと、はっきりわかっていた結末だったからだろう。

それはきっと、忘れていただけで以前の方がずっと辛かったからだろう。


「ちゃんとフラれたんだってね。」

「…あぁ。」


翌日、不二が辞書を借りるという名目で俺のクラスまで来た。

少し嫌そうな顔をした俺に、不二は楽しそうに微笑んでいる。

不二の笑みはいつも浮かべている笑み。

話し合いを終えた後、部室に戻った俺と大石に部活の状況を報告してくれたのは乾だった。

あの後、菊丸が部活に戻ることはなかったらしい。

そのまま家へと帰ったようだと乾は言った。

心配そうに俺を見上げた大石に、大丈夫だ、とだけ返した。


「それで、君はどうするの?」


いつもの笑みを浮かべたまま、不二は探るように俺に聞く。


「はっきりと断られたんだ。どうもこうもないだろう?」

「そう。」


古語辞典を手渡しながら答えた俺に、不二はふふ、といつもの笑みを浮かべた。




























「菊丸!!!」


放課後の部活開始直前。

先にコートに出ていた菊丸を見付けて声を張り上げる。

俺が呼べば菊丸はびくりと肩を震わせて、ゆっくりと振り返った。


「今朝の朝練に来なかった上に昨日無断で早退したそうだな。」

「ぁ、えと、うん…。」


気まずさに目を合わさないようにしている菊丸に、俺はわざと眉間の皺を深くする。


「…グラウンド50周だ。行って来い。」

「へ…。」


俺の言葉に菊丸は目を丸くして俺を見上げた。


「どうした。追加されたいのか?」

「ぇ、や、まさか!!…行って来る!!!!」


ダッと走ってグランドに行こうとして一歩踏み出したところで菊丸は立ち止まる。

俺をぐるっと振り返った。


「アリガト、手塚!!!!」


辺りにいた部員の不思議そうな顔を見ながらその言葉に視線だけ返して、俺はコートに向き直る。

微笑んだ不二と目が合ったけれど、気付かない振りをして声を張り上げた。

練習の説明を始めた顧問の横でふとグラウンドに目を向けると、

息を切らせながらひたすら走っている菊丸が目に映る。

少しの間見つめて一度地面を見、顔を上げた。


ココロは痛くない。

はっきりとフラれたんだ、きちんと諦める。

ここから、また歩いて行ける。


顔を上げたとき目が合った不二の視線からは視線を逸らさず、じ、と見返した。









続く→




けじめの国光。目指せ男前。
私の中ではグラウンド1周=400mなので、グラウンド50周=20kmです。
…頑張れ、英二★