トン、と軽く押されれば、身体は宙に浮いた。




























一段飛ばし。




























俺と菊丸が振り返ると、いつも浮かべている笑みを崩した不二が立っている。

それを目にして、菊丸は少し不思議そうに首を傾げた。


「不二…?」

「どうしてこんな所にいるの?英二。教室にいてって、言ったじゃない。」


不二の言葉に、少しむっとしたように菊丸は顔をしかめる。


「別にいいだろ、どこにいようと。…どうしたんだよ。なんか不二最近おかしーよ。」

「おかしいのは君たちだよ。」


菊丸の問いに、不二はにこりともせずに切り返した。

菊丸は少し驚いたように目を丸くする。

そんな菊丸の様子を見て、不二は視線を俺に向けた。


「いつまで、続けるつもりなの。」


こんな無意味な事。

そう言って俺を睨む。


「…さあな。」


無意味だと、おかしいと、はっきりとわかっている。

けれど、それを望む俺がいる。

少し目を伏せて、俺はそう答えた。


「後悔するよって随分前に言ったよね、ボク。」

「あぁ、言ったな。」


鋭い視線を向けたまま、不二は俺に尋ねる。

『いつまで待つつもりか知らないけど…このままだと後悔するよ?』

確かにそう言われた記憶はあった。

菊丸を抱く少し前。

菊丸には伝えないと気付かないと言われたことも、覚えている。


「…手塚?不二?」


俺と不二を交互に見ながら、菊丸は少し焦ったように名を呼ぶ。

俺を睨んでいた目線を菊丸に戻して、不二は菊丸を見つめた。


「英二、君は別に手塚じゃなくても良いんだったよね?」

「へ?何が?」


突然の不二の質問に、菊丸がキョトンと不二を見返す。

そんな菊丸を見ながら、不二は少し目を細めた。


「キスしてもらうのも、抱かれるのも。」


菊丸が不二の言葉に目を見開く。

不二が何を言いたいのかはっきりとはわからないが、

良くないことを言おうとしているのは明らかだ。

菊丸は目を見開いたまま、その質問に答えを返さなかった。

その反応を『肯定』と受け取って、不二は続ける。


「だったら、手塚だけはやめてあげてよ。」


不二はそう言って菊丸に近づき肩を叩いた。


「…どゆ、こと?」


菊丸は意味がわからない、と困惑した目で俺を見上げる。

俺はそれを確認したが、それどころではない。


「不二。」


強く、でも抑えたように不二を呼ぶ。

俺の声にゆっくりと目を細め不二は俺を見上げ、すぐに視線を菊丸に戻した。

未だに困惑気味の菊丸を軽く引き寄せて俺の方を向かせる。

何を言おうとしているか、はっきりとわかった。


「不二…?」


俺と不二を交互に見ながら、菊丸は不二の名前を呼ぶ。

それに微笑みながらうん。と言って不二は微笑みを俺の方に向けた。


不二が言おうとしているのは、


「英二、手塚はね」

「不二っ!!」





「英二のことが好きなんだよ。」





どうしても伝えられなかった言葉。









続く→





別に塚←不二というわけではありません。
でもそう言う風に見えるなぁ…これ。
違いますよ?