前を見れば、感触は確かにあるのに、見えない段。




























一段飛ばし。




























「てづ…」

「英二。」


「ボクは、そんな関係認めないよ。」

その言葉の通り、不二は徹底的に菊丸を俺から遠ざけだした。

廊下で俺を見付けて駆け寄ろうとした菊丸を、不二はにこりと微笑んで引き留める。

振り返った菊丸に不二は笑みを浮かべたまま意識を別に向けようと言葉を紡いだ。


「次の数学当たるんだよね?宿題ちゃんとしてきた?」

「あーーーーー!!!そうだった!!全然してないよ!!助けて不二!!!!」


菊丸はいとも簡単に意識を俺からそらす。

同じクラスな事もあり、不二は菊丸と違和感なく時間さえあれば一緒にいた。

菊丸の意識が俺に向こうとすれば、何らかの話題を出して意識を他にそらせる。

「次はやってくるんだよ。」と言いながら菊丸にノートを渡すと、

それを持って教室に駆け戻っていく菊丸を見送って不二は俺に視線を移した。

にこりと、微笑まれる。


「不二…。」


俺が不二の名を呟くと不二は視線を俺から外し、

何も言わずに菊丸の後をゆっくり追っていった。


もう随分と必要外では菊丸と口をきいていない。

もともと俺から話しかけることはなかったために、菊丸の意識をそらしてしまえば

容易くその状況を作ってしまえるのだ。

菊丸と同じクラスな上仲の良い不二には、至極簡単なことだった。

それは、部活終了後も然り。


「帰ろう、英二。」


不二は必ず菊丸に声をかけて共に帰る。

少し渋る菊丸に、「この前の写真見たいって言ってたでしょう?」だとか、

「姉さんがパイを作って待ってるよ。」と何らかの理由を付けて、毎日毎日。

菊丸は時折何か言いたげに俺を見るが、

不二の言う一言を聞くといつも意識を不二に戻して嬉しそうに共に帰る。

不二は徹底的に俺と菊丸を2人きりにさせなかった。

そんな事が続いた、ある日。

昼休憩、生徒会室へと向かう廊下の途中。


「手塚手塚ーーっ!!!」


一体どれ位ぶりだろうかと思うような、背中の重みと俺の名を呼ぶ声。

頭だけ振り返ると予想通り菊丸が俺の背中に抱き付いていた。

驚くと同時に嬉しさがこみ上げて来て、俺は内心苦笑する。


「菊丸…。」


それでも呆れた風を取り繕って名を呼ぶと、菊丸は酷く嬉しそうに俺を見上げて微笑んだ。

ふと辺りを見回すと不二の姿はおろか、人の姿すら見当たらない。


「なんか久しぶりーっ!!」

「毎日部で顔を合わせているだろう。」

「あーもう、そーじゃないだろー?」


俺が素っ気なく返しても、そう言って菊丸は抱き付く手を強くする。

いい加減、この程度のことで自惚れようなどとは思わない。

麻痺したココロも、音さえ上げない。


「な、明日暇?」


菊丸の問いに、そういえば明日は休日で更に部も休みだということを思いだした。

部が休みな以上、特別な用事などない。

そう思って俺が頷くと、菊丸はまた嬉しそうに微笑む。


「じゃぁさ、明日手塚ん家に遊びに行ってもいい?」


菊丸がそう言った直後、


「駄目だよ。」


後ろから不二の声が響いた。









続く→





不二が悪役っぽい。
ある意味それを狙ってますが、ある意味全く逆な感じ。
結局はどないやねん。ツッコミはセルフなのです。