立ち止まって振り返れば、

降りるのを躊躇してしまうほどの長い長い急な階段。




























一段飛ばし。




























「手塚、ちょっと良いかな。」


いつものように生徒会室で一人仕事をしていると、不二が訪ねてきた。

いつも笑みを浮かべている顔を、らしくなくゆがませて。


「どうした。」


持っていたシャーペンを置いて後ろ手で扉を閉める不二に視線を移す。


「…英二を、抱いたの?」


扉をきっちりと閉め、顔を俯かせて不二は突然そう言った。

俺は眉間にしわを寄せ、ついに話したのか、と少し冷静に思った。

おそらく、不二が菊丸に「最近手塚と仲良いね?」とでも言ったのだろう。

俺が返事も返さずそう思っていると、不二は顔を上げた。


「誰でも、良かったんだって。」


俺の目をじ、と見て不二は続ける。


「…わかっている。」


俺が肯定を返すと、不二はゆがめた顔を更にゆがめた。

はっきりと口に出されると思ったより辛いものだ。

そんなことを思いながら俺はゆっくりと息を吐く。


「どうして、断らなかったの。」


低く、喉のずっと奥から声を出すように不二が俺に尋ねた。

そんな声を聞いたのは初めてで、少し驚いて不二を見る。


「…不二。」


俺が呼びかけると、不二は奥歯を一度強くかみしめた。


「君は…どれだけ自分を傷付ける気なの…?」


吐き出すように、俺に問う。

…今更、傷付くことなど怖くはなかった。

こんな関係でも少しでも側にいる事が出来るから。

ただ、それだけだった。

問いに答える様子のない俺に、不二は痺れを切らしたかのように俺を見上げる目をきつくする。


「想えば想うだけ、傷付くのは君なんだよ!?」

「そんな事、わかっている!!!!」


声を荒げて言った不二に対して、俺も抑えきれず声を荒げた。

驚いたように目を見開いて黙った不二に、俺は一度息を吐いて言葉を続ける。


「菊丸は興味を満たす相手としか俺のことを見ていない。」


そんな事、最初からわかっていたことだ。

菊丸を抱くよりもずっと前から。

あの、悪戯が始まったときから。


「俺が、どれだけあいつを想っていてもだ。」


ギリギリと麻痺したココロが音をたてる。

痛くもかゆくもない。

それでも、確実に傷付いていることにだって気付いている。

どれだけ想っていても叶わない想いだと、自覚もしている。

不二が本気で心配してくれていることも、わかっている。

それでも。


「それでも、好きなんだ…!!!!」


その声は、自分でも笑ってしまうほどに掠れていた。


「手塚…。」

「すまないが、放って置いてくれ…。」


俺の言葉を聞いて不二はゆっくりと俺に背を向け、扉を開ける。

そこで、止まった。


「手塚。」


俺が顔を上げると、不二は俺に背を向たまま。


「ボクは、そんな関係認めないよ。」


そう言って、今度こそガタンと音を立てて生徒会室の扉が閉まった。









続く→





不二が乙女…!?
いや、不二は男らしい人だと思ってますよ!私!!