いやらしい水音が響く中、快楽の階段を同時に駆け上がっていく。

ひときわ甲高い声を上げて菊丸は気を失うように果てた。

息を荒く、乱して。




























一段飛ばし。




























「菊丸…!?」


暫くしてもピクリとも動かない菊丸に俺は焦って声をかけた。

呼んでも返ってこない声に、更に焦って菊丸を抱き上げ肩を掴む。

よくよく見れば、菊丸はすーすーと寝息と立てて眠っていた。


「ッ…。」


安心して、一度息を吐く。

同時に痛みに涙をぼろぼろと流す菊丸を思いだして、

酷く申し訳ない気持ちと後悔の波が押し寄せた。

辛いのは相手だという事くらい、わかりきっていたのに。

どうして、誘いにのってしまったのだろうか。

どうして、抱いてしまったのだろうか。


「菊丸…。」


涙の跡が痛々しく残る頬を撫でても菊丸に起きる気配はない。

菊丸の甘い声と共に言えない言葉がココロの大きな穴に反響し続けていた。

それ伝える事を、どれだけ恐れればいいのだろう。

そっと菊丸の唇に触れるだけのキスを落とす。


「好きだ、菊丸…。」


一度呟いて、閉じている瞼にもキスをした。




























「ぁ、起きた。」


ふと目を覚ませば横に菊丸の顔があって随分と驚いた。

あぁ、そうか…と、すぐに状況を理解する。


「おはよう、手塚。」

「あぁ…。」


菊丸は笑顔を浮かべている。

昨夜のことなど、何も覚えていないかのように。

ゆっくりと起き上がれば、菊丸に腕を引っ張られた。

何だろうと振り返れば、菊丸は苦笑を浮かべている。


「ゴメン手塚。起きれない。」


本当は先に着替えておこうと思ったんだけどー。

そう言ってもう一度笑う。

一瞬理解できなくて菊丸を凝視する。

暫くして、菊丸の言った意味を理解した。


「…すまない。」


間違いなく、俺が抱いた所為だ。

そう思って謝ると、菊丸は何でもないようにまた笑う。


「んにゃ。いーよー?ってか、俺が誘ったんだし。

 それに、思ったより全然気持ちよかったから。」


はっきりと覚えているらしい菊丸は、もっと痛いと思ってた。と言って恥ずかしげもなく笑った。


「お前…。」

「手塚って上手いんだねー。もしかして初めてじゃない?」


そして、からかうようにニヤニヤと笑う。

俺がじろりと睨むと、うそうそ。と降参するように手を挙げた。


「手塚…ゴメンな?」


ふと真顔に戻ってじっと俺の目を見つめ、菊丸は言う。

ドキリとした。

それは、菊丸の発言についてなのか、菊丸の表情の所為なのかはわからなかったが。

動揺を隠しながら菊丸の顔を見る。


「それは俺がお前に言うべき台詞だろう。

 辛かったのは、お前だ。」


俺がそう言うと、菊丸は少し嬉しそうに笑った。


「手塚ってばやっさしー。部活中は鬼部長のくせに!!」

「関係ないだろう…。」

「そ?だっていつもの手塚を考えたら抱いてくれるとは思わなかったし、

 部活中は全然優しくないじゃん。

 色々意外な手塚が知れて得した気分!!」


興味本位。

わかっていた。勿論。

コイツが俺に近づくのは、自分の興味を満たすため。

その行為が好きだから。

誰でも良いんだ。

わかっているけれど…もし。

この言葉が好意を含んだものだったとしたら、どんなに喜んだだろうか。

そこまで考えて思考を切り、上機嫌げに鼻歌を歌っている菊丸に声をかけた。


「朝食はここで食べるか?」

「ぁ、うん。よろしく。ゴメンなー。」


菊丸の返事に頷いて着替えを手伝った後、部屋を出る。

一度ゆっくり息を吐いて、階段を下りた。


「おはよう、国光。」

「おはようございます。」

「あら、菊丸君は?」


いつもより少々早い時間だった所為か、居間には朝食の準備をする母の姿のみ。

母は俺の横にいない菊丸に気付き、不思議そうに声をかける。


「どうやら寝違えてしまったようで…しばらく動けないので朝食は部屋で取ります。」


俺がいつものように淡々と言うと、母は少し心配そうに了承をした。

出来たら呼ぶからと言う母の言葉に頷いて、部屋に戻る。


「大丈夫だった?手塚。」


ドアを開けるなり、ベッドから菊丸が顔をのぞかせた。

一度頷き、菊丸を抱き上げる。


「おわ、な、何!?」


焦ったように声を出す菊丸を、床に敷いてある布団におろした。


「お前の布団はこっちだからな。」

「ぁ、なるほど。」


俺がそう言うと、菊丸は納得しながら自ら布団をかぶる。

しばらくすると余程疲れていたのだろう、静かな寝息が響きだした。

俺は一度大きく息を吐く。

心の中に反響し続ける甘い声を吐き出すように。

相手が俺じゃなくても抱かれたのだろうか。

そう思うと、穴がまた少し大きくなった。

けれど。


「国光ー。」


呼ばれて立ち上がる。

振り返れば、安らかな表情で寝ている菊丸。


…誰でも、良かったのかもしれない。

けれど、

とりあえず今だけだとしても、興味本位だとしても、

少しでも隣にいられる今を少し嬉しく思った。









続く→





国光さんの英二が降りられない理由…笑い所かと。
寝違えたってお前!!!
でも他の理由が思いつかなかった私の貧困な頭を恨むしかないようです★