桜の花が、とても幻想的に舞っていた日。




























春。




























桜の花びらがひらひらと舞う。

中学校生活三年間の内多くを過ごした部室の裏、

桜の花びらがあたりをピンクに染めていた。

明日が過ぎれば、この場所とも縁がなくなってしまう。


「好きだ。俺と付き合ってくれないか?」


告げられた言葉を理解するのに暫くの時間を要した。

目の前には、片思いの相手。

用があると呼び出されれば気付いてもおかしくはなかったかもしれないけれど、

俺は男で、相手も男で。

まさか、叶う想いだとは思わなくて。


「…菊丸?」


俺の名前を呼んで、いつも無愛想なそいつは

驚くことに困ったような表情を見せた。


「迷惑なら構わない。すまなかった。」


俺の沈黙を『否』と取ったそいつは俺の肩に手を軽く乗せ、

俺の横を通り過ぎた。


「手塚。」


もう一度いうが、さっきまで目の前にいたそいつは俺の片思いの相手で。

当然、『否』などと言うわけもなくて。


「俺、も。」


勢いよく振り返って告げると、

そいつも振り返って今度は驚くような表情を見せた。


「手塚が好きだ。」


もう一度、はっきりした答えを告げる。

だって、好きで好きで仕方なかったんだ。

望みがないって、わかっていても。

だから、こんなチャンス逃したくない。


「本当か?」


確認するような言葉に、俺は思わず吹き出した。

普段のコイツから考えれば、おかしいことこの上ない言葉。


「こんな状況で冗談言えるほど、俺酷い人間に見える?」

「いや。」


冗談で返せば、至極真面目に返された。

そんなトコも好きなんだけど。


「そんじゃ、俺からも言うね。

 手塚が好きです。俺と付き合ってください。」


俺が言うと、見たこともないようなすごく柔らかい笑みを浮かべて

手塚は一言「あぁ。」と言った。






ひらひらと舞う、桜の下。

卒業式の、前日の話。




















end.