追試前日、快晴。




























「不二…もう、ギブ…。休憩休憩!!」


げんなりとしながら机に突っ伏した英二の言葉に、かかっている時計を見上げれば

まだ始めてから1時間も経っていない。

英二の追試前日。

このままじゃ夏休みがなくなる〜!!といつものようにすがりついてきたのは英二の方。

当然のように部活はあるけれど、仕方がないなぁ。と、

部長である手塚に許可を取った上で付き合って図書室に移動して、もうこれ?

不二は呆れた視線を向けて、目の前にある英二のつむじを本の角で強く押した。


「ぎゃ!!」

「駄目だよ、英二。まだ1時間経ってないじゃない。」

「なんだよー!!授業だって50分じゃん!!」


ぶーぶーと文句を言いつつ、英二に起き上がる気配はない。

不二は読んでいた本を置いて、もう一度英二のつむじを今度は指で強く押した。


「だぁっ!もー何すんだよ不二!腹壊す!!」


ガバリ、と起き上がってそう抗議する英二に、不二はにこりと涼しい笑みを向ける。


「そんなの迷信でしょう?」

「わかんないだろ!俺が腹壊して追試受けられなかったら不二の所為だからな!!」

「ちゃんと勉強しなかった英二の自業自得。根性でなんとかしなよ。」

「…薄情者。」


根性って言葉がなんて似合わないんだ、とぶつぶつ言いながら英二はまた机に突っ伏した。

まったくもう、とため息をついて、窓の外を見る。

空は青々と晴れ渡っていて、面しているグラウンドからは色々な部の部員達の声が聞こえてくる。

そろそろ梅雨明けかなぁ、と不二は頭の隅で思った。

…梅雨明けよりも、今大事なのは明日に迫っている追試だよね。

ぐだぐだと机に突っ伏している英二のはねた髪をぎゅぎゅ、とつぶすように撫でると、

ぶつぶつと言いながらもやっと顔をきちんと上げた。

その下から出てきた問題集を覗いて、不二は再度呆れた視線を英二に向ける。


「まだ2問目じゃない。」

「わっかんねぇもん、こんなのー。」


ポイ、とシャーペンをノートの上に投げて、英二も先程の不二のように窓の外に目を向けた。


「第一、こんなキレーに晴れた日にテニスできないって理不尽じゃん。」


綺麗に晴れ渡った空を見て、英二は不満げに言う。

その言葉を顧問や部長に聞かせれば、

「普段勉強していない菊丸の所為だ!」と叱られるに違いないけれど。


「…それは、確かにね。」


こんなに晴れた日は、やっぱりテニスがしたくなる。

同意して頷いた不二に英二は少しバツの悪そうな顔をした。

それに気付いた不二が、小さくクスリ、と笑う。


「何?今更。いつもの事じゃない。」


くすくすと笑っている不二を見ながら、英二はやっぱり少し顔を歪ませていた。

その髪を、今度はつぶれないようにぽんぽん、と軽く撫でて、不二は窓の外に目を移す。


「ボクとしては、嬉しいんだけど?」

「へ?」


窓の外を見ながら言った不二の言葉に、英二はぽかんと口を開けた。


「こんな晴れた暑い日に、涼しい図書室で英二と二人っきり。

 それも堂々と部活をサボれるなんて、滅多にない事でしょう?」


夏休み直前のこの時期、放課後を図書室で過ごそうという人なんて滅多にいないらしく、

図書室は貸し切り状態だった。

にこ、といつものように笑みを向けて不二が言うと、

英二は少し呆然とした後に少し照れくさそうに笑う。


「そっか…そうだよな。

 うし!もうちょっと頑張るか!!」

「うん、頑張って。」

「おう!んでさ、多分閉館時間までには終わらないと思うんだけど…。」

「付き合ってあげるから、泊まりに来る?」

「やった!」


至極嬉しそうに両手を上げた英二に、不二は立ち上がって掌を伸ばした。

きょと、と不二を見上げた英二の額に、柔らかく唇を寄せる。

途端、カッと顔を真っ赤に染めた英二を見下ろしながら、


「終わったら、続きね?」


と言って、不二はもう一度笑った。









終。