もうホント、最悪。




























熱。




























「じゃぁ、行って来るけど…気を付けてきちんと寝てるのよ?」


大姉ちゃんの言った言葉に、俺は声も出さず軽く頷く事で返事を返す。

申し訳なさそうに部屋の扉を閉めて、大姉ちゃんは部屋を出て行った。

今日は俺の誕生日。

何がどう悪かったのか、俺はこの通り昨日の夜からの熱が下がらず寝込んじゃってます。

冷たくて気持ちがいいけれど、額に張られた冷却シートが切なさを煽る。

今年は誕生日当日が日曜って事で夜には手の込んだごちそうが待ってるはずだったのに

こんな身体じゃ食べられるはずもなく当然お預けだし、

夜まで戻らないと知ってた家族はみんなして用事を入れていて

すまなそうに出かけてっちゃった。

唯一お昼までいた大姉ちゃんももう出て行っちゃうからホント一人っきり。

もう最悪、こんな誕生日。


本当なら、手塚とデートする予定だったのに。


何をやったらいいのか見当もつかない、と言った手塚に

一緒に見て回る口実でデートをしようと持ちかけたのは俺。

承諾してくれた時、めちゃめちゃ嬉しくて思わず抱き付いたのは先週の事。

その後すぐ風邪引いてこれだよ…。

謝りのメールを送ったけど、その返事は随分と素っ気なくて寂しかった。

部のみんなから祝いのメールも来てたけど、返事を返す気力もない。

喉が痛くて、電話にも出られない。

心の中でみんなに謝りながら、俺は一度焼けるように熱い息を吐いた。


「あら、今日和。」


出掛けようとしてたであろう大姉ちゃんの声が玄関の方から小さく聞こえてきた。

どうやらお客様みたい。でも残念。今は誰もいないよ。

半ば思考能力の低下した頭でそう考えて、俺は目を閉じる。

何も考えたくないし、何もしたくない。

昼食の後に飲んだ薬の所為か、ゆっくりと襲ってくる睡魔に俺は身をゆだねた。




























ひたり、と額に張られた冷却シートよりも冷たい感触が頬に触れて、俺は意識を浮上させる。

けれど目を開ける事すら億劫で、目を閉じたまま頬の冷たい感触に意識を向けた。

その時ふわりと香った香りに、俺は思わず目を開く。


「すまない。起こしたか?」


目を開いて初めに目に入ったのは近い天井じゃなくて、心配そうに俺を見つめる手塚の顔。


「てづ、ナッ…」


驚いて思わず起き上がって声を上げたけれど、

枯れ果ててしまっている喉が引っかかって言葉を紡ぐ前にむせた。

ゲホゲホと咳をくり返す俺の背を、手塚がゆっくり撫でてくれる。


「英二、喋るな。」


風邪引いてる時気弱になるってホントだな。

たったこれだけなのに、なんか泣きそう…。

手塚はむせたのと気弱になった所為で潤んだ俺の目下をゆっくりと撫でた。

手塚の肩に額を寄せ、一つ息をつく。

うわぁ…手塚だぁ…。


『なんでいるの?』


顔を上げ、口をぱくぱく動かしてそう言うと、

俺の髪をゆっくりと撫でながら手塚は少し困ったように笑った。


「お前が心配だったからな。

 …それと、配達係、だそうだ。」


その言葉に俺が首を傾げると、手塚は少し苦笑を深めて

「部員からお前へのプレゼントの。」と付け加える。


「英二の所に行くんでしょ?」


じゃあよろしく。と出掛けに不二にごそっと渡されたらしい。

指をさされた場所を見下ろすと、沢山のプレゼントが机の上に並んでいた。


「それぞれ不二・大石・乾・河村・海堂・桃城・越前からだ。」


元レギュラー全員の名前が挙がって、俺は少し驚いて目を見開く。

嬉しさに緩む頬を抑えながら、ふと気づいた事を口にした。


『あれ、ここまで手に持って運んできたの?』

「そうだが。」


いかにもプレゼントですって包みを眉間に皺を寄せた手塚が運んできたかと思うと、

俺は思わず吹き出してしまう。

喉が痛いから声が出せなくて、逆に辛かった。

俺の反応を見て手塚はバツが悪そうに眉間の皺を寄せ、俺の額を一度小突く。

冷却シートがぶに、と潰れて変な感じ。


「さぁ、もう横になれ。熱はまだ高いのだろう?」


そう言ってバツの悪そうだった顔を心配そうなそれに変えて、

手塚は俺の背を支えながら布団に寝かせてくれた。

布団を掛けて、俺の髪をゆっくり撫でる。

ひんやりとした手が気持ちよくて、俺はその手を持って頬へ移動させた。


「英二?」


不思議そうな手塚の呼びかけには答えず、手を放して俺は目を閉じる。

あぁ…手塚だ…。

喉はひりひり痛くて身体は凄くだるいんだけど、そう思うと凄く嬉しくてホッとした。

俺はできるだけ身体の力をぬいて布団に身をゆだねる。

そうすれば、感じられるのは頬にある手塚の体温だけになるから。


「…おやすみ、英二。」


声を聞いただけで、手塚が笑みを浮かべている事がわかった。

その直後軽く唇に触れた温かい感じ。

風邪、移ったらどうするんだよ。

頭の隅で悪態をつきながらも口にはしない。

プレゼントは今のキスでいいや。

そんな事を考えながら襲ってくる睡魔に抵抗もせず、

俺はゆっくりと手塚の体温を感じながら眠りについた。




























「渡しそびれてしまったな。」


英二が寝入ったのを見届けた手塚は少し苦笑を浮かべた。

その手には、緑の包装紙に黄色のリボンの小さな箱。

恋人への、誕生日プレゼント。

一緒に選ぼうと言ったものの、その数日後にどうしてもやりたいものが出来てしまって

プレゼントが二つでも構わないだろうと思って購入したものだった。


「…誕生日、おめでとう。」


その箱を眠っている英二の横に置いて、手塚は英二の髪に口付ける。

起こさないよう、軽く軽く触れるように。

顔を上げると、英二の口元には笑み。

それ以上の笑みを、置いてある箱に気付いた時に浮かべてくれればいい。

そう思って、手塚はゆっくりとはしごを下りた。





終。





+コメント+

 ハッピーバースデイ!!菊丸英二!!

 っちゅー事で何度目かの15歳ですが…つーか、まだ14歳ですよね、本誌もアニメも。

 季節的に15歳だとテニス部引退してるので、困りものです。

 テニス部内にしたらおチビ出せないじゃん!!!とかとか…。

 というか、よくよく状況考えたらこれはギャグ小説以外のなんでもないですよ。

 だって、英二氏のベッドは二段ベッドの上!!つまり、

 手塚はずっと梯子の上ですから。足とか震えてても仕方がない状況ですよ!!

 必至で掴まってるんですよ!!結構あの梯子急ですからね!!!

 それでも案外イケるかもしれない…途中で落ちるとか。

 間抜けですねー!!!あはははは!!!!!

 あぁ…祝ってない…とりあえず、ラブラブって事で。(汗)


2004-11-28 茶瓜。