某日正午。




























カチ カチ カチ


無機質な音が部屋の唯一の音らしい音となって、辺りに響いている。

音の主の示すのは時間。

指すのは11時をもうすぐ終えようとしている辺り。

部屋にある唯一の窓からは、

遠い遠い場所から降り注いでいる穏やかな光と柔らかな風が隔たりの途切れを見つけて入ってくる。

柔らかな風に舞うのは、部屋に置かれた机の上にある薄い紙と、

体温に触れる布と、茶と赤茶の細い繊維。


ゆら ゆら ゆら


主には届かぬ音を立てて、風と舞うように揺れるそれ。

ヒラリ、と舞い上がった薄い紙が、赤茶の繊維に軽く触れる。

それに反応したのか、それともただ動いただけか、赤茶の主はゆっくりと赤茶の先を上に向けた。


とくん とくん とくん


触れる音に、赤茶の主は言葉を紡ぐ場所を少し開ける。


すぅ


少しだけ多めに酸素を取り入れて、また、音らしくない音に戻って行った。

触れる音と、温度。

茶の主は、小さく小さく二酸化炭素を吐きだして、小さく小さく酸素を取り入れる。

音が赤茶の主に、触れないように、触れないように。

何処までも、無意識に、無意識に。


カチ

ふわり ふわり


果たして、小さく進んだ音の主と同じくして穏やかに舞っていたのは、

繊維なのか、

紙なのか、

布なのか、

それとも、

触れ続ける、音なのか。









カチャ


軽い音が響いて部屋のドアが開き、顔を覗かせた母親は二人を見て穏やかに微笑んだ。


「あらあら…二人とも寝ちゃったのね…。」


穏やかな日差しの差し込む部屋で、柔らかな布団を背に、音を触れさせたまま。









end.