塚菊とか言いつつ、手塚が出てきません。本気で空気です。

塚菊が空気なくせに、跡部神尾、仁王柳生、鳳日吉が出てきます。

導入部分だけ書いて、フラグだけ立てて力つきております。

同じマンションパロしたくて挫折したんだぜ!

地雷カプがある方はここで逃げちゃってください。

それぞれのカップリングと直接関わってないので、

最初と最後だけ読んでもつながります。

読んでみるかなーって方は、レッツスクロール。























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僕らはここで。
















都内某所、繁華街の中に1件の新築マンションが完成した。

15階建てのマンションで室内は全て2LDK。

都心のメイン路線である最寄り駅から徒歩数分、

駅へ向かう道なりに商店街や各種施設も充実している。

室内の防音は完璧で、部屋の戸や窓を閉め切れば楽器演奏も可、という徹底振りだった。

最上階は全部で4室あり、それぞれが角部屋になるように、

四隅をそれぞれ割り当てたような造りになっている。

周辺にさほど高い建物がないため、最上階からの景色は立地、階数の割に良かった。

広めに取ってある日当たりの良いベランダから、心地よい風が入ってくる。

そんなマンションの、最上階の一室。

引越し業者が部屋を出て行って暫く、そこかしこにダンボールが積み上げられている。

ダンボールが四方八方に積まれたリビングで、突然響いたくぐもった女性の歌声に、

本を取り出していた不二周助が顔を上げた。

ベランダから入ってくる風に、そのさらりとした茶色い髪がなびく。


「英二、携帯鳴ってるよ。」


キッチンの整理をしている赤茶の髪をした部屋の持ち主へ声を投げたが、

ザアザアと流れる水道の音の所為で聞こえていないようだった。

不二はその場から立ち上がり辺りを見渡すが、音源である小さな機械は見つからない。

広げられている荷物の中にまぎれてしまったのだろう。

探すのを諦めて、不二は菊丸英二の方へ歩いて行った。


「電話鳴ってるよ、英二。」

「あ、ほいほーいっと。サンキュ、不二!」


不二が肩を叩いて知らせると、菊丸は積まれているタオルの中からあっさりと携帯を取り出す。

タオルに埋もれてくぐもっていた歌声を止め、小さな機械を耳に当てた。


「もっしもーし。お疲れー。

 うん?大丈夫だって。不二も手伝ってくれてるし、大石も後で来てくれるって言っただろ?」


そこまで言って、電話の向こうに見えないだろう苦笑を返す。


「帰ってくる頃にはバッチリ生活できるように整えておくからさ。

 気にしないで行ってこいよ。」


穏やかでどこか甘い菊丸の声は、初夏の風に乗って喧騒の中にある電話の向こう側へ届いた。

















同時刻、不動産屋の前で言い争う二人。


「だから、俺が出せる範囲にしろって言ってるだろ!」

「俺様がこんな狭い部屋に住めるとでも思ってんのか?

 うちに越してくるか、家賃持つって言ってるじゃねーか!」

「ぜってーーーー嫌だ!だだっ広い部屋に住みたいならお前一人で住めよ!俺は帰る!!」


そう言って不動産屋の前から走り去って行った黒髪の青年を、

整った顔立ちをした青年が大きく舌打ちをして追いかけていく。


「おい、待ちやがれ神尾!」


現役でないとはいえ神尾アキラの俊足は健在で、

跡部景吾といえど比較的すぐに追いついたのは、神尾が本気で走っていなかったからだ。

神尾の腕を掴んで振り向かせ、跡部は大きくため息をついた。


「わかった、八:二だ。それならいいだろ。」

「せめて六:四。」

「…七:三だ。それ以上は譲れねぇ。」

「チッ、わかったよ。」


共に暮らすこと望んでいるのは同じだ。

収入の差があることなんてよくわかっているけれど、だからこそ、神尾には譲れないものがある。

不貞腐れた表情をした神尾が渋々納得し、再び二人で不動産屋の前に戻ってくる。


「第一、こんなもんわざわざ見に来るようなもんじゃねーだろうが。」

「地元不動産のネットワーク馬鹿にすんじゃねーよ!いい物件がある他の店紹介してくれたりすんだぜ!」


賃貸マンションの張り紙を前に跡部が顔をしかめて言うと、神尾が得意げにそう言ってニカ、と笑う。

出会った頃からあまり変わらない幼い笑顔に毒気を抜かれて、跡部は再び張り紙に視線を戻した。


「お、ココいいじゃん。新築・駅近・家賃も予算内。どーだ?跡部」

「見てみねーとなんとも言えねーな。」

「おう、入って相談しようぜ!」


開いた自動扉から涼しい風が流れてくる。

跡部と神尾は連れ立って不動産屋の扉をくぐった。

















「さて、どうしましょうか…。」


すこし陽が落ちてきて室内が暗くなった部屋の中、電気をつけるほどではないのか気にならないのか、

やや薄暗い部屋の中に二人の人物が居た。

ベージュのソファに座っている眼鏡をかけた青年は、6つの物件の資料を前に首をかしげる。

その横に座っている銀の髪をした青年は、ダーツの矢を弄びながらその様子を他人事のように眺めていた。


「仁王君、あなたの家でもあるのですよ?もっと真面目に考えたまえ。」

「…プリッ。」


返事ともいえない言葉を返した仁王雅治が、隣に座る柳生比呂士の前に広げられた資料を

ちらりと見るが、すぐに視線を外した。


「2件目と5件目以外ならどこでもよか。」

「そう言われましても…そうですね…。」


仁王が指定した2件と更に1件の資料をよけ、残り3件の資料を見ながら柳生は唸る。

広げられた資料の物件は一通り部屋を見て回っており、後は決定して引っ越すだけだ。

学生時代から住んでいる柳生のこの部屋は、ほぼ同棲といえる割合で仁王が住み着いており、

増えた仁王の私物も含め二人で住むには手狭だった。

ちょうど更新の時期ということもあり、二人で住むことを決めたのだ。


「そうじゃのう…。」


柳生の残した3件は仁王としても妥当で満足のいく物件だった。

少し考えるような仕草をした仁王は、弄んでいたダーツの矢を不意に壁に掛けられている的へ放つ。

ゆるく弧を描いて的に刺さった矢の示す数字を見て、

学生時代から引き続いて詐欺師と呼称される笑みを浮かべた。


「3件目、じゃな。」


博打のような決め方だが、付き合いの長い柳生は特に気にする様子もなく、

ではそうしましょうか。とあっさり立ち上がった。

不動産会社に電話をかけに行く柳生を見送って、仁王はちらりと矢の刺さっている的を見る。


「ピヨッ。」


その数字が狙ったものか偶然か、外したものなのか。

知るのは仁王のみ、である。

















「日吉はどんな部屋がいい?」


明るく尋ねてきた銀髪の長身に、日吉若は顔をしかめた。


「まだ先だ。鳳。」


テーブルに向かい合わせに座り、鳳長太郎が用意した夕食を彼の部屋で食べている。

鳳の銀の髪が蛍光灯に鈍く反射し少し眩しいが、

それに慣れるくらい彼の部屋を訪れている自覚が日吉にはある。

食事中に会話することを好まないこともあり、

そっけなく返す日吉に鳳は困ったような苦笑をして首を傾げた。

共に暮らすことに日吉が先日了承し、互いの両親に報告という形で挨拶に行った。

とはいえお互いの仕事の都合上、引っ越すのは早くても半年先になるのは確実だった。


「そう?でも、話し合っておくに越したことはないだろう?」

「…家からさほど遠くなければいい。」


現在も実家暮らしの日吉は実家の古武術道場を手伝っており、週に数度は顔を出す。

その都合上、仕事の後でも寄ることが出来るように遠くない方がいいのだ。


「そうだね。俺としては楽器が弾けるところがいいなー。」

「ああ、そうだな。」


ピアノとバイオリンを弾くことが趣味の鳳は、現在住んでいる部屋では弾く事が出来ないため、

時折簡易スタジオのようなところで弾いている。

次に引っ越すならば防音の整った、楽器可のところが理想だ。

日吉としても、鳳が楽しそうに音を紡ぐのを聞いているのは、嫌いではない。


「じゃあ、楽器可で日吉の家から離れてない場所、探してみるよ。」

「ああ、俺も見てみる。」


頷きを返した日吉に鳳は笑みを見せる。

鳳の幸せそうな笑顔に毒気を抜かれながら、日吉は食事の続きを始めた。

















再び、マンション最上階の一室。


「手伝ってくれて、ありがとね!」

「うん。また呼んでよ。」

「じゃあな、英二。」


中学時代からの付き合いである不二と大石秀一郎が連れ立って帰宅していき、不意に表札を見上げた。

そこに書かれた「手塚・菊丸」の文字に口の端を上げる。

気分は上々。

菊丸は部屋に戻り、うん、と一度伸びをした。

引っ越したばかりの部屋を見回すと、ダンボールは随分と少なくなったが、

まだまだ整理が終わったとは言えない。

新しい部屋のにおいと、ダンボールのにおいと、整理した荷物に残っていただろう少しの残り香。

高揚感と緊張と、少しの寂しさと。


「さ、それなりでキリ付けて早く寝ないとね。」


明日からは普通に仕事もある。

そう思考を切り替え、菊丸は携帯電話を開いて1通メールを送ると、自分の部屋に消えていった。


この部屋で、新しい生活が始まる。










終わり。



貧乏性過ぎる上にマイナーばっかりでホントすみませんでした!
そして空気にも程があるよ、手塚。