練習試合の帰り道。

うとうとと半分以上瞼が下がっている慈郎の襟首を掴みながら、

テンション高く喚く向日を怒鳴り付けながら学校へと帰っていた道の途中。

久しく見る、意外な顔に会った。




























Between




























「あれ〜?青学〜?」

「あーん?起きたのかよ。」


うとうとしながら慈郎が呟いた言葉に、跡部は襟首を掴んでいた手を離す。

支えるモノを失った慈郎の身体は、当然のように地面へ落下。


「痛っぁ〜!!ひでぇよぉ〜跡部ぇ〜。」

「置いてくぜ。」


打った所をさすりながら不平を述べる慈郎をさらりと無視して、跡部はいつものように樺地を連れて歩き出す。


「お、ホントだ。青学菊丸じゃん!」

「待ち合わせでもしとんかいな。こっちは練習試合帰りでくたくたやっちゅーのに。」


歩き出した跡部の後ろで、慈郎の視線の先を辿ったらしい向日がぴょこぴょこ跳ねながら嬉しそうに声を上げた。

同じく姿を確認したらしい忍足が向日に続き、うらやましそうにため息をつく。

200m程先のベンチ、そこに私服姿の菊丸が一人で座っていた。


「デートですかねぇ、宍戸さん。」

「はぁ?俺が知る訳ねぇだろ。」

「違うだろ。横にテニスバッグ持ってる。」


同じく菊丸を見つけた鳳がそう言うと、宍戸はいつものようにぶっきらぼうに答え、

目が良い日吉が鳳の発言を否定した。


「おぉ〜い!青学ーーー!!」

「きっくまるーーー!!」


さっさと氷帝へ戻りたい跡部の意志を無視するように、慈郎と向日が菊丸に向けて走り出す。

跡部が呆れから盛大にため息をつくと、

忍足に「ああなったジローと岳人とは止められへん。諦めや。」と、肩を叩かれた。

もう一度、大きくため息をつく。


「行くぞ、樺地。」

「ウス。」

「おら!お前らも行くぜ!!」


いつものように声をかけて、慈郎と向日を回収する為に菊丸の元へ向かった。


「青学!ひさしぶりぃ〜!!!」

「この間の試合ぶりだよな!菊丸!!」

「…氷帝の向日に芥川!?何でこんなトコに…!!!」


ベンチに座っている菊丸を囲うように現れた二人に、菊丸は驚いたように目を見開いた。

その表情は、少し焦っているようにも見える。


「こんな時間にんな所にいるとは余裕だな?青学。」

「跡部!?って、勢揃いじゃん、そっち。」


跡部が声をかけると菊丸は更に驚いたように目を見開き、後ろにいるメンバーを確認すると表情を苦笑に変える。


「あぁ。俺ら練習試合帰りやねん。」

「あ、そーなんだ。良いなぁ…俺んトコ、昨日今日コート整備でしたくてもできねぇの。」


それで私服にテニスバッグか、と跡部が納得していると、完全に覚醒したらしい慈郎が

菊丸に飛びつかんばかりの勢いでそっかー!そっかー!!とはしゃいでいる。


「で、何やってんだよこんなところで。」

「…あーーっと…人待ち?」


向日の聞いた問いに、菊丸は少し困ったように笑って答えた。


「ほら、やっぱりデートじゃないですか!宍戸さん。」

「だから、俺は肯定も否定もしてねぇよ!!」

「別に待ってるのが彼女なんて言ってないだろ、鳳。」


先程の推理(?)が当たったのが嬉しいのか、鳳がはしゃぎながら宍戸に言い、

やっぱり宍戸がぶっきらぼうに返して日吉が冷静に返す。

跡部の後ろで交わされた会話に、菊丸は少し目を見開いた後、喉の奥で笑った。


「んじゃー誰待ってんの?青学〜?」


続いて聞いた慈郎の問いに、菊丸は「んー、まぁ、そうだよ。」と言って曖昧に笑う。


「ほれ見ろ、長太郎。デートじゃねぇじゃねぇか!!」

「何だ…残念ですねぇ…。」

「何で鳳が残念がるんだ…。」


菊丸の返事を聞いた宍戸がそう言って鳳の頭を叩き、鳳は叩かれた頭をさすりながら残念そうに呟いた。

呆れたような日吉が鳳に続いて呟く。


「で、その相手は何処行ってんねや。」

「さっきまでそこのテニスコート借りてたから、会計任してあんの。」


忍足の問いに、菊丸は背にあるビルを指して言った。

確か屋上にテニスコートがあったな、と忍足は納得して頷く。


「休みの日にも練習してんのかよ。熱心だなー。」

「そう?ま、これくらいだからねー。」

「?ふーん…。」


よくわからないながらも曖昧に頷き、向日は誰を待っているのだろうと頭の端で思った。

そんなやりとりを聞いていた跡部はふと思い出して腕時計を見る。

予定より15分の遅れ。


「樺地。」

「ウス。」


樺地を呼び、話に花を咲かせている慈郎の襟首を思いっきり掴ませた。


「うげ!苦しいぃ〜!!放せ樺地ぃ〜!!跡部ぇ〜!!!」


襟首を掴まれてそう訴える慈郎の頭を拳で殴り、跡部はいつものように声を張り上げる。


「おら、帰るぞ!!宍戸、鳳、日吉もだ!!

 忍足、何一緒になってやがるっ!!パートナーの管理ぐらいしろ!!」

「あ?へーへー。ほら岳人、帰んで。菊丸、また試合でな。」

「もー帰んのかよ。じゃーまたな!菊丸!!」

「菊丸じゃ〜なぁ〜!!」

「あ、うん。またな。」


軽く頭を下げる鳳と日吉と樺地、何もせず歩き出した跡部と宍戸、

ひらりと手を振った忍足と向日、樺地に引きずられながら笑って大きく手を振る慈郎を見送りながら、

菊丸はやっぱり少し曖昧に笑っていた。

暫くひらひらと手を振っていた菊丸の後ろに、影。


「英二…?」

「あ、お帰り。」


低く響く声を振り返って、菊丸は少し困ったような笑顔を向けた。




























「そーいえば誰を待ってたんだろうなぁ〜。」

「不二か大石辺りじゃねぇの?」

「せやなぁ。案外桃城と越前かもしれへんけど。」


ずるずると樺地に引きずられながら慈郎が呟いた言葉に、向日と忍足が答える。

3人のやり取りに本日何度かのため息をついて、跡部は横にいる慈郎の頭を殴った。


「いってぇ〜!!!殴るなよぉ〜跡部ぇ〜!!」

「気になるなら見りゃいいだろーが。まだいるだろうよ。」

「お。そっか!!さっすが跡部ぇ!あったまイー!!」


嬉しそうにはしゃぐ慈郎にから視線を戻し、跡部は前に向き直る。

おそらく監督はもう帰ってらっしゃるだろう。

そう考えて、少し頭が痛くなった。


「…。」

「……。」


ふと、後ろに付いてきている気配がない事に気付き、跡部は後ろを振り返る。

見れば、跡部以外誰一人、さっきから位置が変わっていなかった。

樺地までも。


「どうした。」


聞くと、慈郎は前を指さした。さっきいた方向。


「…手塚だ。」

「あぁ?」


意味をはかりかねて、跡部は慈郎の指さした方に目を向ける。

そこにいたのは、自分たちには背を向けてテニスバッグを背負い、

会話を交わしている菊丸と…手塚の姿。

菊丸が楽しそうに笑っている横で、手塚の口元が微かに笑みの形を取っていた。


「手塚が笑ってんの、初めて見たわ…。」


忍足が呆然と呟いて、向日は呆然と口を大きく開けている。

手塚の雰囲気が、自分たちの知っているそれとは似つかぬ程柔らかいのが、遠目にもわかる。

菊丸の頬が少々色付いて見えるのも、きっと気のせいではないだろう。


「意外…です。」

「だな。」

「…。」


ぽかんと口を開けて言う鳳に宍戸が頷き、日吉は呆然と見つめたまま黙っていた。


「まぁ、良いんじゃねぇの?」


いち早く思考を取り戻した跡部がそう言い、「帰るぜ、樺地。」といつものように声をかけて歩き出す。


「うん。結構イーんじゃない?」


樺地に引きずられながらまだ二人を眺めていた慈郎も、満足そうに笑ってそう言った。

意外な場所で見つけた意外な二人は、意外としっくりくるらしい。

未だ困惑気味の5人を見ながら、跡部は口の端で小さく笑った。















end.





青学内じゃ近すぎで、かといって他の学校じゃ書き分ける自信がないので氷帝の皆様にご出演頂きました。
…本音を言えば、ジロが好きで関西弁スキーだからなんですがネ★
時間的には氷帝戦前なのですが…このメンバーでの練習試合ってあり得ない…。(汗)
ご都合主義ですみません。
こんな感じもたまにはアリって事で。