例えるなら、雨のような。




























A raing day.




























外が小さな音をたてだして、覚醒と睡眠の間をうろうろしながら意識を外に向けた。

雨だ。


「傘、忘れた…。」


傘を持って行けと言っていた姉の言葉を思い出して、

少し申し訳ない気持ちになる。

時計を見ると、朝の5時を過ぎたところだった。


「…英二?」


すぐ横で寝ていた手塚が、英二の言葉に反応して目を覚ます。

そっか、泊まったんだっけ。

そう思っていると、ゆっくりと抱き寄せられて手塚の体温が英二の肌に伝わる。

まだ覚醒し切れていない彼を見ることが出来るのは、英二だけの特権。

きっと、家族すらもあまり見ることがない表情。

幸せな気分になって英二も手塚の首に腕をまわした。


「おはよ、手塚。」


肌を重ねた翌日。

溺れるような熱と快楽を共有した翌朝は酷く優しい気分になる。

少しの腰の痛みや、怠いような疲労感も然り。


「おはよう、英二。」


何よりも、滅多に見られない手塚の寝起きの笑顔なんて見た日には

その日1日が幸せに過ごせる。


「…雨、か?」

「ぁ、うん。さっき降り出したみたい。」


少しぼうっとした手塚の瞳が窓の外の雨を写す。

雨はしとしとと降り続けていた。


「英二。」


雨を見つめたまま名を呼ばれて、英二は少し驚いて手塚を見る。

どうしたの?と聞いてみると一度額にキスをされた。

どきどきするような、柔らかい笑みと共に。


「手塚…?」


少し頬を赤く染めながら英二は手塚の目を見つめる。

目を細めたまま、頬に、瞳に、もう一度額にキスをされた。


「好きだ。」


溢れんばかりの愛情を込めて、手塚は英二に告げる。


「英二。」


もう一度名を呼ばれて、どきどきとゆっくりと速度を上げる英二の心臓に、

もう一度口付けを。


「ん。俺も。」


答えと共に、英二は手塚の唇に自身のそれで軽く触れる。


「まだ、早いよ。」

「あぁ。もう一度寝るか…。」


柔らかいまどろみをあなたと共に。

ゆっくりと進む、時計の針と共に。


「おやすみ、手塚。」

「おやすみ、英二。」


しとしととあふれ出す、雨のような淡い恋。









了。