迎春朝




























107まで告げて間を開けていた鐘が最後の音を告げ、新年を迎えた事を悟る。

随分と賑やかな様子を映すテレビと同じように、


『明けましておめでとー!今年もよろしく〜!!』


と、文面だけでも充分な程賑やかなメールが携帯を震わせ、俺の元へ届いた。

年が明けたばかりのこの時間、すぐに返事を返すことは困難だろうと、

あえて返事は返さずに携帯を閉じる。


「お友達から?国光。」

「…はい。」


かけられた声にそこが居間であった事を思い出し、少し慌てて顔を上げた。

そして再度、頭を下げる。


「明けましておめでとうございます、お祖父様、父さん、母さん。」

「うむ、おめでとう。」

「明けましておめでとう、国光。」

「おめでとう、国光。」


和やかな雰囲気で、あまり実感は湧かぬものの新年を迎えた挨拶を交わした。

それから、食べかけだったこたつの上のみかんに手を伸ばす。

一つ口に含んだ所で、わっと歓声を上げたテレビの音に意識を奪われた。

日の変わったばかりの時間だというのに随分と人の多い神社を映している。

ふと母が俺の方に視線を向け、にこりと微笑んだ。


「初詣に出掛けるのよね?」

「はい。明日の朝、元テニス部の皆と。」

「そう、気を付けてね。」

「はい。」


一度頷いて答えれば、母は嬉しそうに笑う。

何だろうと見返すと、いいえ、と母は首を左右に振った。


「嬉しそうね、と思っただけよ。」

「…そうですか。」


不思議そうな顔をする祖父と父を端目に、俺は少しだけ意識をして笑った。




























「手塚、明けましておめでとう。」

「明けましておめでとう、大石。」

「今年もよろしくな。」

「あぁ。」


いつもの如く誰よりも早く来ていた大石と新年の挨拶を交わし、

まだ誰の来る様子もない鳥居の前で白い息を吐き出した。

さほど早い時間ではないものの、地元の小さな神社な所為か、

行き交う人はあまり多くはない。

特に話すでもなく過ごしていると、

大石が少し身じろいでコートのポケットから携帯を取り出した。

画面を見て、小さく笑う。


「英二、もう少しで着くって。越前と桃も一緒だってさ。」

「そうか。」


一度頷くと、大石は楽しそうに笑った。


「何だ?」

「いや、手塚がもう着いてる事わかってるのに、

 何で英二は俺にメールしてくるんだろうってさ。」


手塚も手塚で気にしてないみたいだしな。

そう言って笑う大石を見ながら、俺は一度首をかしげる。


「菊丸と大石の仲が良いのは、当然だろう。」


俺がそう言うと、大石はさらに楽しそうに笑い始めた。


「何?楽しそうだね、大石。」


後ろから掛けられた声に振り返れば、不二がにこやかに笑っている。

その後ろに、河村と乾も立っていた。


「明けましておめでとう、2人共。」

「あぁ。おめでとう、皆。」

「おめでとう。」


大石と同じく新年の挨拶を軽く交わし、

早速というように不二は大石の元へ歩み寄っていく。


「で、何の話してたの?」

「あぁ、手塚と英二が…。」


不二に先ほどの話をする大石を横目に、俺はさっさと乾と河村の元へ向かった。


「良いのか?」

「構わない。」


乾の言葉の意味はわかっているけれど、

特に困る事ではないので一度頷くに留める。

河村は少し困ったように笑っていた。


「明けましておめでとうございます。」


低い声に視線をそちらに向ければ、海堂が礼儀正しく一度礼をする。

それにそれぞれ挨拶を返し、後は菊丸と桃城と越前を待つのみとなった。

瞬く間に人数の増えた場は少し活気付いたのか、多少暖かくなった気さえする。


「あ、来た。」


不二の声に視線を前に向ければ、自転車に乗った桃城と後ろに乗った越前、

それに付いて走ってくる菊丸が見えた。


「くおらおチビーーー!!先輩に譲れよ、その席っ!!」

「先輩もう引退してるんスから、

 走って体力付ける位が丁度良いんじゃないッスか?」

「まぁまぁ、越前もエージ先輩も、落ち着いて…。」

「何なら桃が代わってくれてもいーんだけど?」

「ゲ!俺のチャリッスよ、これ!!」

「もうちょっとッスよ、菊丸先輩。」

「誤魔化すなーーー!!」


賑やかな声に、周りが小さく笑うのを感じる。

騒がしい奴だ、と思う反面、不快には感じない。

そう思いながら眺めていると、不意に顔を前に向けた菊丸と目が合った。


「お、手塚ー!!」


あけおめー!と、楽しそうな笑みが一直線に俺へと近付いてくる。

目の前に立った菊丸におめでとう、と返せば、菊丸は嬉しそうに笑った。


「明けましておめでとう、英二。」

「おめでとう、英二。」

「不二に大石!あっけおめー!!」


久しぶりに会った不二と大石に、

菊丸は楽しそうに挨拶をしながら飛びついている。


「明けましておめでとうございます!先輩方!」

「オメデトーゴザイマス。」


それを横目に見ていると、追いついた桃城が自転車を押しながら頭を下げ、

その横で自転車を降りた越前も桃城に倣うように頭を下げた。

2人に挨拶を返すと、不二と大石に飛びつき終えたのか、

菊丸は俺達の少し後ろにいた乾と河村に飛びつき始めた。

相変わらずの笑みを浮かべた不二が、俺の横に来る。


「久しぶりなんでしょう?

 随分とあっさりしてるね。」

「…そうか?」


何の事かはわかっているので、特に聞きもせずに返事を返す。

答えを聞いた不二は、楽しそうに笑みを深めた。


「ボク達には飛びついて、君には挨拶だけでしょう?」

「そうだな。」


事実なので、否定はしない。

けれど、久しぶりであろうと、毎日会っていようと、これが普通だろう。

そう思う。

菊丸の過剰なスキンシップこそ、異常なのだから。


「劇的な再会シーンでも、演じて欲しかったか?」


ふ、と笑って言えば、不二は驚いた顔をした。

たまには不二を驚かせる位、良いだろう。


「冗談なんか言えたんだね、手塚。」


至極楽しそうに笑い始めた不二を横目に、

河村に飛びついている背に声を掛ける。


「菊丸。」


声を掛けると、菊丸は少し嬉しそうに振り返った。


「揃った。行くぞ。」

「ほいほーいっ。」


楽しそうな声で返事が返り、

軽やかな足音で俺に近付いて、横に並ぶ。

菊丸が俺を見上げ、嬉しそうな笑みを浮かべた。

それを見たのだろう、不二が俺の後ろで楽しそうに笑む。

十分だろう?


「お賽銭って5円?やっぱ。」

「そうなのか?」

「それ、ご縁がありますようにって事?

 定番だけどね。」

「まぁ確かに定番だけど、少なくないか?」

「今年の賽銭予想平均額は307円だそうだ。」

「307円かぁ…俺には痛いなぁ。」

「先輩、寒いッス。」

「我慢しろよ、俺だってさみーっての。」

「鍛え方が足んねーからだ。」

「あんだと!?」

「まぁまぁ、桃も海堂も、新年早々喧嘩するなよ。」

「相変わらずだねー、お前ら。手塚、グラウンド10周?」

「言うか。」


いつもの面々と、満面の笑み。





明けましておめでとう。

今年もよろしく。









終。





 縦関係ラブ。3人一緒にいると茶瓜が喜びます。
 最後の会話はどれが誰なのか、ご自由にご想像下さい。(笑)
 久しぶりにあっさりほのぼのと。イチャイチャのイの字もありません。
 明けましておめでとうございます。今年もこんな感じに頑張ります!
 な、意気込みで。
 相変わらずにトロトロ進んでゆきますが、
 今年もどうぞよろしくお願いしますv

 2006-01-03 茶瓜。