なんてったって、第一印象が大事だもんね!!!




























ハッピーホリデー。




























隣を歩いているこいつは、柄にもなく緊張しているらしい。

背中を軽く2度叩くと、驚いたように振り向いた。


「な、な、手塚っ!!俺、変じゃないよな?」

「おかしくはない。少し落ち着け。」


そわそわとしている分には、かなりおかしいと思うが、こいつ自体がおかしいわけではない。


「ホントにホント!?マジマジマジ!?」

「嘘はつかん。」


とはいえ、挙動不審すぎるのも確かだ。


「うわぁぁぁ…緊張する…。」


もう一度背を叩くと、すがるような潤んだ目が俺を見上げた。

事の始まりは昨日の部活中。




























「明日、時間あるか?」


部活終了5分前。

水飲み場にいる英二に声をかける。

必要以外ではあまり声をかけない俺に、英二は驚いたように目を見開いた。

周りに人がいないのを確認した上だったので、問題はないはずだが。

「え、俺?」

「お前以外に誰がいるんだ。」

「や、部活中に声かけるなんて珍しいじゃん。」

「誰もいない。」


俺がそう言うと「あ、そっか。」と、英二はにこりと笑った。


「んで、どったの?」


用件を言いかけたのを思い出して、英二は首を傾げる。

そのふわふわとはねている英二の髪を二度ほど撫でた。


「あぁ、母がお前に会いたいと。」

「手塚の、おかぁさん?」

「そうだ。昨日話したら是非、と。

 明日なら学校も部活もないし、丁度いいと思ったんだが。」

「話したって…俺のこと?」

「そうだが…いけなかっただろうか?」


少し俯いてそわそわしだした英二に、もしかしたら嫌だっただろうかと聞いてみる。

しかしそれは杞憂だったようだ。

英二はパッと顔を上げ、頬を染めながら嬉しそうに微笑んだ。


「んなわけないっしょ!!会いたいってお母さんが思ってくれるような紹介してくれたって事だろ?

 つか、親御さんにご挨拶ーって!!なんか恋人って感じ!!」


そう言って英二は嬉しそうにはしゃぎ、ぎゅうっと俺に抱きつく。

やわからく抱き返すと、楽しみー。と、俺を見上げた。


「明日は大丈夫だと伝えても良いということか?」

「勿論!!お土産持って行くね!!」


気を使わなくていいと言いかけて、やめた。

英二の言う「親御さんに挨拶」というヤツなら、その言葉には甘えるものだと思ったからだ。

礼の変わりに髪を撫でる。


「そこのバカップル。いい加減部活終了時間なんだけど?」


突然現れた不二の呆れるような言葉に苦笑を返して、俺と英二はテニスコートへと急いだ。




























そして、現在に至る。

俺と英二は近くの公園で待ち合わせて、俺の家へ向かっていた。

英二の手には、鞄とお土産が入っているらしい箱が握られている。

先ほどからそわそわしている英二は昨日の夜、

よくよく考えると緊張することだと気付いたそうだ。

しかも、今日は休日。

母もいるが、当然のように父も祖父もいる。

昨日英二が来ることを伝えたら、皆が皆、それとなく楽しみだと言っていた。

自由奔放にやっているように見えて、実は常識はちゃんとしている俺の恋人は

その点では心配はないものの、


「気に入られなかったら、どぉしよぉ〜!!」


無意味に焦っているらしく、それが裏目に出ないことだけが心配だった。


「英二、大丈夫だ。いつも通りでいい。」

「いつも通りがわかんねぇーーー!!」


相当混乱しているらしく、うなったり叫んだり、忙しいヤツだ。

辺りを見回して誰もいないことを確認すると、英二の手を握る。

驚いたように俺を見上げる英二に笑みを返した。


「俺がいるだろう。大丈夫だ。お前が気に入られないということなどない。」

「…ん。サンキュ。」


少し落ち着いたらしい英二は手を握り返して、ホッと息をつく。

自宅の前に着く直前まで、俺達は手をつないで歩いた。


「あら、国光。」

「只今帰りました。」

「はい、お帰りなさい。…そちらが?」


家に入ると母が迎えてくれた。

嬉しそうに英二を見て、俺に紹介するように促してくる。


「ぁ、は、初めまして!!菊丸英二です!!」

「はい、初めまして。英二君…でいいかしら?」


母の言葉を受けて、英二はぺこりと頭を下げた。

母も挨拶を返す。


「はい!!あの、これ。お口に合うかわかりませんが…。」


そう言って、英二は持っていた箱を母に差し出した。


「あらあら…そんな気を使ってくれなくてもよかったのに…。」

「そういうわけにはいきません。お邪魔させていただくんですから。」

「そう?…じゃぁ、あとで飲み物と一緒に持って行くわね。

 ありがとう、英二君。」

「いえ。」

にこりと母が笑ったのを見て、英二も安心したように笑みを浮かべた。

英二が笑みを浮かべたのを見て、母は更に笑みを深くする。


「あなたの言っていた通り。可愛い人ね、国光。

 あぁ、可愛いというのは失礼だったかしら?」


母の言った言葉に顔を真っ赤にした英二を見て、俺は軽く肩を叩く。

英二は俺を見上げて、一度笑みを浮かべた後、


「いえ、あの、嬉しいです。」


そう言って、照れたように笑みを浮かべた。

可愛い。

思わずそう思って英二に向かって笑みを向ける。


「あらあら。」


そこを母に目撃され、少しバツの悪い気分になった。


「英二。部屋に。」

「へ?あ、うん。すみません、お邪魔します。」


部屋に行くように促すと、一瞬目を丸くしたがすぐに頷いて、

英二はまた母に頭を下げた。

嬉しそうに微笑む母を見て、間違いなく気に入られたなと思う。

靴を脱いで英二を家に上げる。

部屋へ向かおうとした、その時、


「おぉ。来たか。」


居間から祖父が顔を出した。

祖父がいることを知らない英二は困惑したような顔で俺を見上げている。


「帰りました。」

「よく帰った。そっちか?」

「はい。菊丸英二君です。」

「あ、菊丸英二です!!お邪魔させていただいてます!!」

「おお。よく来たな。ゆっくりして行くといい。」


困惑しながらもきちんと挨拶した英二に、祖父も好感を抱いてくれたようだ。

滅多に浮かべない笑みを浮かべて英二を招き入れている。

ん?招き入れて…?

ふと見れば、英二は祖父の勧めで居間に通されていた。

慌てて後を追う。


「お祖父様っ!?」

「どうした、国光。早く座りなさい。」

「あ、え。…はい。」


祖父に促されて思わず座る。

隣を見れば、英二が楽しそうに笑っていた。

鬼部長が形無し〜。

聞こえないように言ったつもりだろうが、聞こえているぞ。


「あら?英二君、これってもしかして手作り?」


 台所から母の声がして、英二はそっちにかけていく。


「あ、はい。昨日慌てて準備したんで、お口に合うかどうかわかりませんが。」

「おはぎなら、合うお茶があるの。丁度よかったわ。」

「本当ですか?良かったです。あ、何か手伝いますよ。」

「あら、ごめんなさいね。ありがとう。

 でも、昨日の今日でおはぎを作っちゃうなんて、凄いわね。もしかして、料理好き?」

「はい。うちって家族多いんで、当番制で回って来るっていうのもあるんですけど。」

「そうなの?なら、今度手料理でも作って貰おうかしら?」

「俺のなんかで良ければ。」

「楽しみにしてるわね。」


交わされる会話に、まるで嫁と姑のようだと思って自分の思考に苦笑する。

台所を見ると、英二が嬉しそうに笑っていた。


「国光、国晴さん呼んできて貰えるかしら?

 みんなで英二君の作ったおはぎをいただきましょう。」

「はい、わかりました。」


俺が椅子を立つと、英二と母はまた楽しそうに話を始めた。

祖父もそれを見ながら、嬉しそうに微笑んでいる。

なんだかくすぐったいような気分になって、俺は居間を出た。

父がいるであろう部屋の扉をノックをする。


「国光か。お友達は来たのかい?」

「はい。おはぎを作ってきてくれたので、お茶にしようと。」

「おはぎ?それは楽しみだな。じゃぁ行こうかな。」

「はい。行きましょう。」


にこにこと微笑む父と居間へ向かう。


「国光。」

「はい。」


その途中父に呼びかけられ、足を止めた。


「菊丸君だったね?」

「はい。そうですが。」

「良かったな。」


そう言う父は、酷く嬉しそうな顔をしていた。

何が?と聞くことはせず、はい。と答えた。

よくよく考えれば、友人を家に連れてくるのは初めてかもしれない。

細かく言えば、英二は友人ではないのだが。


「あ、てづ…じゃなかった。国光君のお父さんですか?

 初めまして。菊丸英二です。お邪魔してます。」


居間へ戻ると、まず英二が父に頭を下げた。

英二の言った“国光君”という言葉に、むずがゆいような違和感を覚えつつ、見守る。


「こちらこそ、初めまして。いつも息子と仲良くしてくれて、ありがとう。」

「いいえ。俺が世話してもらってばかりなんですよ。」


にこりと微笑みながら言った父に、英二も笑みを返した。


「国光、国晴さん。ささ、座って座って。

 英二君も、お客さんなんだから。」


そこへ母がやってきて、お茶の準備が出来たらしく座るように促された。

俺の隣に「すいません」と言って英二が座った。

とても不思議な気分だった。

いつも通りの食卓なのに、隣に英二がいる。

不思議な気分なのに、違和感がないのが逆におかしかった。


「英二君のおはぎ、凄く美味しいわ。」


酷く嬉しそうな母の言葉に、英二が照れたように礼を言う。


「あぁ。甘過ぎなくていい。」


ちょっとした時間だったが、英二と母、それに祖父まで

ずいぶんとうち解けたようだった。

祖父の様子に、父までも驚いている。

暫く皆で他愛もない話をして、俺と英二は部屋に向かった。




























「手塚っ。」


部屋に入った途端、英二は俺に抱きついてきた。

それをしっかりと受け止めて抱き返すと、英二はにこっと笑って俺を見上げた。


「どうした?」

「いいね。お母さんもお父さんも、爺ちゃんも。

 俺、手塚の家族すっごい好き。」


嬉しそうに、幸せそうに微笑む。

照れくさくはあるが、好きだと言って貰えればそれ以上のものはない。


「そうか。ありがとう。」

「いいえー。あとさあとさ?」


 それに、


「なんか、お嫁に来ましたーって感じだったと思わない?」


少し照れたような笑みでそんなことを言われれば、

口付けずにはいられないだろう?


「英二。」

「ん?」


ゆっくりと顔を近付けて英二の唇を俺のそれでふさぐ。


「えっへー。国光君ってば大胆!!」


唇を離せば、英二はやっぱり照れたように、幸せそうに微笑んだ。

ぎゅっと抱きしめると英二の腕が俺の背に回る。


「英二。」

「何?」

「嫁に来るか?」


俺の言葉を聞いた英二はぱちくりと目を丸くし、理解した瞬間に顔を真っ赤にした。


「わ、わ、わ!!それってプロポーズ!?」

「他に何がある?」

「にゃーっ!!嬉しい!!行く行く行く!!行っちゃうよん!!!」


飛び跳ねるように背伸びをして、英二は俺の頬にキスをする。

俺はお返しとばかりに額にキスを返した。


「あ、そうだ。手塚、気付いた?」

「何がだ?」

「手塚、1回家族の前なのに俺のこと『英二』って呼んだんだよ?」


そうだったかと考えを巡らせるが、覚えはなかった。

無意識下の行動だったらしい。

まぁ、英二が嬉しそうだから良しとするか。

一人そう納得して、俺は英二をもう一度抱きしめた。




























「お邪魔しました。」


夕食も食べていけばいいのに、と言う母の申し出をすまなそうに断って、英二は玄関に立っていた。

名残惜しそうな家族に、俺は少し苦笑を漏らす。


「またいらっしゃいね?英二君。」

「はい。今度は料理作りに来ますよ。」

「今度は泊まりに来るといい。」

「是非。あと、時間があったら柔道教えて下さいね。」

「勿論。弱音を吐くでないぞ?」


母、祖父と一人一人挨拶を済ませていく。

最後に父が英二を引き留めた。


「英二君。」

「はい。」

「国光を、これからも宜しく頼むよ。」


それはきっと深い意味などなかったのだろうけれど、


「はいっ!!」


英二はそれは嬉しそうに、綺麗に微笑んで返事を返した。


「菊丸を送ってきます。」

「えぇ、気をつけて。」

「行って参ります。」

「お邪魔しましたー!!」


玄関を出て、二人で歩く。

日の沈みかけた道は、長く長く俺達の影をのばしていた。

隣でくすぐったそうに微笑む英二の頭を小突く。


「だって、任されちゃったよ?俺。」


くすくすと笑って英二は言う。

さっきの父の台詞が酷く嬉しかったようだ。


「手塚家公認の婚約者って事かにゃ?」


俺の腕にぎゅっと抱きついて、英二は俺を見上げる。

よしよしと髪を撫でると、夕焼けに照らされた赤茶の髪が光を反射させていた。


「また来い。」

「うん。絶対行く。」

「じゃあ。」

「ん、また明日。」


太陽の所為で真っ赤に染まった額に一度キスをして、俺と英二は手を振った。

また明日。

いつか、それがなくなればいい。

帰ってくるのが、俺の側になればいい。

そう思いながら、俺は愛しい恋人の背を見送った。













大好きなあいつの大事な家族。

なんか照れるけど、いつか俺の家族にもなる人。

第一印象、バッチリですか?




















end.













+言い訳+

100番キリリクで、「塚菊で手塚家の家族に可愛がられる菊のお話」でした!!

みいこ様、リクエストありがとうございました!!

「王子がらみの塚菊」とどちらかだったんですが、それはその内書きそうなので、

別に機会に回させていただきました。

なんといいますか、お待たせした上にこんなモノで申し訳ないです。

正直………可愛がられてないですね。はい。無駄に長いし。

ご、ごめんなさい……!!!!!!!

家族出しただけじゃん!!みたいな。すみません!!!

しかもなぜかプロポーズまでしてるし!!手塚暴走です。予想外。(汗)

み、見捨てないで下さい…!!!!

こんなモノでも宜しければ、貰っていただければ嬉しいです。

リクエスト、本当にありがとうございました!!!!!


2004-09-17 茶瓜。